ゲノムシーケンサーで全員検査

 新型コロナウイルスの問題では、よく検査の問題が指摘されます。ドイツでは現在、1週間に検査できる件数が100万件近くになっています。でも、そのうちの半分も検査されていないのが現状です。

 ドイツでは、検査費は健康保険機関が負担ひます。そのため、健康保険機関が症状が出て感染の疑いがあると判断されるまで、検査させていないようです。コスト削減ということですね。人の命も金次第といわなければなりません。

 日本では、あまりにも検査が行われていないのが問題です。早く感染者を把握して感染ルートを突き止め、感染者と濃厚接触者を隔離する。それが、通常のパンデミック対策です。でも、日本では重症にならないと検査されません。

 ドイツの専門家によると、新型コロナでは症状が出て3日ほどでウイルスには感染能力がなくなるといわれます。それを前提にすると、日本のように症状が重くなってから検査をしても、感染の拡大を防ぐことができません。日本の場合、検査して陽性とわかっても、誰かを感染させる可能性はもう小さいと見られます。

 その意味で、日本の対策は失格でした。それでいて、感染がそれほど拡大しなかったのはとても不思議です。この点はなぜなのか、今後解明されなければなりません。

 今年、秋から冬にかけて第二波がくることが心配されます。100年ほど前のスペインかぜでも第二波、第三波があったとされます。その時は、第二波において致死率が俄然上がったといわれます。

ロックダウンで閑散とするベルリンの観光名所ブランデンブルク門

 さて、ぼくたちは今後、新型コロナに対してどうすればいいのでしょうか。
 
 これまで検査といってきたのは、PCR検査といわれる病原体を検出する検査のことです。それに対して、遺伝子の塩基配列を読み出すことのできる装置ゲノムシーケンサーを使って感染者を確定し、感染者を隔離すれば、新型コロナを完全に撲滅することも可能だといっている科学者がいます。

 マックス・プランク分子遺伝子学研究所元研究者のハンス・レーラッハさん(73)。研究所を定年退職した後、個人で研究所を設立し、がん患者のがん細胞のゲノム分析をしてがん治療に役立てています。ゲノム解析者です。

 ゲノムとは、DNAに関するすべての遺伝情報のことです。新型コロナでは、2020年1月にゲノム配列が公開されています。新型コロナでは、RNAの塩基配列を読み込んで新型コロナウイルスを確定します。

 ゲノムシーケンサーは、コピーマシンに大きなモニターがついているような感じの装置です。現在使われているゲノムシーケンサーは、次世代あるいは次々世代型といわれるもの。ゲノムシーケンサーを何台も使えば、1日か2日で全体で200億件まで検体を読み取ることができるようになります。それに対してPCR検査では、1度に読み取れる検体は400検体以下なので限界があります。時間もかかります。

 またゲノムシーケンサーは、低コストで検査を実施できます。検体の読み取り自体は1検体当たり数セント(数円)、検体の取り扱いや輸送費を入れても数ユーロ(数100円)にしかなりません。それに対してPCR検査では、1検体当たりの検査に60ユーロ(7000円)もかかります。

 レーラッハさんは、検体の採取も住民が自分でやればいいといいます。住民1人当たりに検査用の綿棒を5本渡します。1週間毎に検体を採取して、綿棒を返還します。検査プロセスは5週間で終わるということです。それで、すべての住民の検査を行うことができます。

 ゲノムシーケンサーの魅力は、検査のスピードが早く、低コストだということ。だから、住民全員(!)の検査が可能となります。

 PCR検査のように、検査の容量に限界があるので、症状が出ないまま把握できない感染者を見逃しません。感染を確認された人をすぐに隔離すれば、新型コロナを完全に撲滅できます。隔離も2週間ではなく、他を感染させる心配がなくなるままでいいといいます。

 全員検査と感染者の隔離で、ウイルスはもう誰も感染できなくなり、死滅します。ロックダウンも必要ありません。莫大な経済損失は発生しません。だから、莫大な救済措置も必要ありません。

 問題はむしろ、検査技術ではありません。住民全体が検査を受け入れてくれるかどうか。さらに、綿棒など多量の検査キットを用意して、それをすべての住民に配布できるかどうかです。綿棒にはバーコードをつけますので、配布者の割り付けなどたいへんな準備が必要になります。

 個人情報保護の問題も心配されます。そのため、レーラッハさんはゲノムシーケンサーセンターを各地に設立して、個人情報も地域毎に保管し、中央管理するべきではないとします。後は、バーコードと携帯番号を組み合わせて、携帯に検査結果を自動的に知らせます。

 レーラッハさんは、パンデミックは新型コロナで終わるわけではない、いつ新しいパンデミックが起こるかわからないと警告します。そのため、次に備えて、ゲノムシーケンサーによるパンデミック防護体制を今のうちに構築しておくべきだと主張します。

(2020年5月29日、まさお)

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関連サイト:
ハンス・レーラッハさんのプロフィール

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