夏の甲子園、慶應優勝に思うこと
今年2023年の夏の甲子園全国高等学校野球選手権において、神奈川県の慶應義塾高校が優勝しました。107年ぶり2回目の優勝というのは、歴史的な勝利です。
しかしぼくはもっと違う視点から見て、この優勝は歴史的、画期的なものだと思います。
一つに、選手たちの長髪です。
ぼくは中学生の時、坊主頭にするのがいやで越境入学していました。県内の中学では、長髪でいいのは当時、2校しかありませんでした。その1校がぼくの自宅からそれほど遠くないところにありました。祖母の自宅がその中学校の校区にあったので、祖母のところにいることにして越境通学していました。
ぼくは今でいう、ロードバイクというスポーツ自転車に乗って、通学していました。当時、そういう自転車に乗って通学する中学生もごくまれでした。
野球部も長髪でよかったように記憶するのですが、どうだったでしょうか。今も高校の野球部では、坊主頭にするのが当たり前です。なぜ、坊主頭一辺倒にするのか。坊主頭にするか、長髪にするかは選手の自由です。それを坊主頭に強要するのは、上下関係を誇示するために、上からそうするよう指導するだけの権威主義ではないですか。
もう一つは、慶應高校という秀才たちが揃う学校の野球部が優勝したということです。今の高校野球は、野球留学までさせて全国から優秀な選手を集めている私立高校が、圧倒的に強いのが常識になっています。
選手たちは寮生活をして、野球一辺倒の高校生活を送っています。大学進学は、優秀な選手であれば野球推薦入学できます。大学進学の心配もそれほどありません。それに対して慶應高校の選手たちは、野球と勉強を両立させて、ここまで強くなっています。
スポーツと勉強を両立させるというのは、これまでの日本のスポーツの常識を破りしまた。
森林監督さんも、常に考えることをモットーに野球をさせているとインタビューに答えていました。それは、優勝後の選手たちに対するインタビューを聞いてもよくわかりました。
選手の発言は、高校生離れし、大人を感じさせました。普段から考えて行動し、発言しているからこそ、こう対応できるのだと思います。型通りの、枠にはまったことしかいえない日本のスポーツ選手とは、まったく違っていました。
ぼくはいつも、公立高校に強くなってほしいと思っています。ただ公立高校は大学進学の問題があるので、公立高校が弱いのはそれがネックなのかなあと思います。その点、大学進学のことをそれほど心配しなくてもいい慶應高校の選手たちは、恵まれているのだろうと思います。
さらにもう一つは、選手たちが個性を生かしながら、自由に、野球をエンジョイしている姿が伝わってくることでした。選手たちがなにかつけ、笑顔を見せてくれるのが自然で、とても印象的でした。
勝つことを使命とする私立の野球校の選手たちとは、まったく違う雰囲気があります。
慶應の森林監督さんは、常識を覆して高校野球を新しくする、高校野球を変える勝利ではないかと、インタビューで話していました。
その通りだと思います。監督さんは本当に、いい仕事をされています。
こうしていろんな分野で、古くて、凝り固まった日本の常識を破り、若者たちが成長する手助けをする人材が、今の日本には必要です。そうして日本を下から変えていかない限り、日本はますます世界から取り残されていくだけだと思います。
今回の慶應の優勝が、日本社会が目を覚ます一つのきっかけになってくれることを願います。
(2023年8月23日、まさお)
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