グローバル化と金融緩和

 冒頭文で、グローバル化された現状を簡単に述べた。たとえば、ある製品が世界各地で生産、製造された物や部品で構成され、最終組み立てされた国が製品の製造地になっている。

 極端にいえば、一つのものをつくるのにほぼ世界中が関わっているとイメージしてもいいと思う。そうしてできるだけ安くものつくりをしないと、他国に負けてしまう心配がある。だから国内でものつくりに関わるには、賃金を上げることができない。賃金を上げると、製造コストが上がるからだ。ものつくりに必要な原材料の価格が上がっても、企業は販売価格を上げることができない。

 これが、悪循環をもたらす。賃金が上がらないので、消費者は財布のひもを緩めず、消費しない。そうなると物が売れないので、企業は販売価格を上げるどころか、下げなければならなくなる。その結果、物価が上昇せず、デフレとなる危険がある。

 となると、企業は設備投資や新しい製品を開発するための技術革新にお金を投入できず、技術力が落ち、競争力も下がる。

 景気は必然的に下落し、不景気となる。

 この悪循環を打開するため、中央銀行が紙幣を次から次に刷りまくる。お金をばらまくことで、貨幣の価値を人工的に下げるのだ。販売価格が下がらないままだと、物価が上昇した感じとなる。これが量的金融緩和というものだ。

 中央銀行が国債など償還に時間のかかる長期金融資産をなりふり構わず買い入れるのが、質的金融緩和だ。日本のアベノミクスは、これまでにない「異次元的」な質的・量的金融緩和で支えられてきた。

 しかし、その効果がとても限定的なのは明らかだ。ドイツの中央銀行、連邦銀行がアベノミクスについて「ワラを燃やすようなもの」とコメントしたことがあるが、まさしくそうだと思う。

 景気が上向けば、賃金が上がって消費が伸び、経済が良い方向に循環するという時代は終わったといっていい。企業成績が伸びても、賃金が上がらないことでも明らかだ。

 ぼくは、この悪循環の原因が単にグローバル化にあるとは思っていない。でも、その一つの原因であることは明らかだと思う。

 企業が国際化し、世界中の投資家から大きな影響を受けていることも忘れてはならない。そして、株で得た利益に対する課税率が賃金に対する課税率よりも格段に低いことも。

(2019年2月18日、まさお)

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