自由貿易協定によって規制緩和
日本では、TTP(環太平洋パートナーシップ)締結を契機に自由貿易協定(FTA)の是非が問題になった。
一般的には、自由貿易協定といったほうがわかりやすい。でもこれは、関税の撤廃などを決める自由貿易協定というよりは、それをさらに拡大して知的財産保護の問題や投資のルールなどまで取り決める経済連携協定(EPA)といったほうがいいかと思う。
協定は、2カ国以上の地域単位で締結される。グローバル化が進むにつれ、こうした経済協定によって関税など貿易における障害を撤廃ないし緩和して、より国際的に貿易を進めようというものだ。
日本では、TTPにおいて日本の農業への影響が問題にされた。輸入農産物、特に輸入米に対する関税が撤廃されると、日本の米に大きな影響が出ることが心配される。
ただ協定は、国内の特定産業に対する影響だけで済む問題だろうか。
ぼくはそうは思わない。自由貿易を促進すると、各国、各地域で規定されている技術基準や労働基準、環境基準、食品安全基準、消費者保護基準など広い分野に渡って影響がある。
これら基準は、国や地域毎に決められている。当然のことながら、国や地域の間に格差がある。グローバル化で、基準が国際的に調和されてきている。でも、この調和とはどういうことなのか。その意味が問題だ。
基準には高低の格差があるので、調和するとは、どちらかに合わせるか、どちらかに歩み寄るということだ。これまで国際的な枠組みにおいて、高い方の基準に合わせて調和しているのは、EU以外にはないと思う。
基準が高くて規制が厳しいところでは、それだけ生産コストが高い。貿易協定で関税が撤廃されると、その生産コストがそのまま製品価格に大きな影響を与える。
そのため、各分野の基準をどう調和させるのか。それが、自由貿易について交渉する上で、とても重要な問題となる。でも調和といっても、基準の低いところに合わせるのは、基準の高いところにとっては規制緩和を意味することを知ってもらいたい。
たとえ基準に関して低いところに合わせるのではなく妥協が成立しても、高い基準で妥協されることはない。必ず、高い基準よりは低いところで妥協される。
工業国の経済界にとっては、それは最も望むところでもある。それによって、国内でも規制緩和して基準を下げないと、競争には勝てなくなる。国内で規制緩和への圧力が増す。
その結果、どうなるか。
グローバル化で経済協定が広い範囲に拡大されればされるほど、本来人の健康や安全を守るはずの基準が緩和され、引き下げられる。
それが、自由貿易のもう一つの現実だ。
(2019年3月14日、まさお)