産業革命の遺産

 資本主義の基盤になっているのが、18世紀後半から起こった産業革命だ。特に、蒸気機関の開発によって大きな技術革新が起こり、機械化が進んだ。その恩恵を受けたのが、繊維産業と製鉄業だ。

 さらに、蒸気機関が交通に応用され、蒸気船や鉄道が発明された。この交通革命によって、植民地が資源供給地と市場となり、本国と結ばれる。

 電気と石油、原子力を利用することで、工業化が急速に進んだ。ここでは、内燃機関の発明がその大きな要因となっている。

 それに平行して、農業革命によって農業生産が大幅に向上。人口増加をもたらす基盤となる。それが、工業化する社会に労働力をもたらす原動力ともなった。

 蒸気機関(たとえば発電)と内燃機関(たとえば自動車)では、石炭や石油などの化石燃料がエネルギー源として利用される。化石燃料は、遠い過去において太陽エネルギーを化学エネルギーに変換して成長した生物を起源とする。経済はそれをエネルギー源とすることで成長し、資本を蓄えてきた。それが、現在の豊かさをもたらしたといってもいい。

 化石燃料は、過去に残されて保存されていたエネルギーだ。現在、生態系で循環して保存される以外の過剰エネルギーということでもある。そう考えると、過剰エネルギーを使うのだから、地球が温暖化するのも当然といえる。このまま地球温暖化で、地球の生活が将来困難になるようなことにでもなれば、人類は産業革命によって「パンドラの箱」を開けてしまっとことになる。

 もう一つの問題は、産業と経済、社会が技術革新によって大きく変化しているとはいうものの、基本的に現在も依然として蒸気機関と内燃機関に依存していることだ。それが今、IT化やデジタル化によって産業と経済、社会が根本的に変わろうとしている。

 それに対応するためには、構造改革が必要だ。でも過去の経験からしても、既存構造に依存するシステムはそう簡単には改革できない。これまでの構造で既得権益を得て、資本を蓄えてきた資本家は、その利益を手放したがらない。

 既存システムの下で働く労働者は前項で述べたように、簡単に解雇される。失業した労働者を再雇用できるようにするためには、新しい産業が必要だ。労働者もそれに合わせて、再教育しなければならない。でも、気付いた時には手遅れで、失業者が増えるだけとなる。

 構造改革には、たいへんな時間がかかるのだ。でも、経済界では自分の経営成績とは関係のない将来のことまで考えている人材はごくまれだ。普通であれば、目先のことしか考えない。

 だから、いつまで経っても産業革命後にできた構造とシステムのしがらみから逃れることができない。でも、現在の豊かさの基盤になっている化石燃料が有限であることを忘れてはならない。化石燃料はいずれなくなるのだ。

(2018年10月22日、まさお)

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