新しいネコたち

 2009年9月、メスネコのエルザが19歳で死んだ。それからは、もうネコは飼わないつもりでいた。ペットは動物といえ、家族の一員。亡くなると、家族の一人を失ったのと同じだ。とてもつらい。

 でも、ネコのいない生活もつまらない。エルザは「苦情受付係」といわれ、われわれ夫婦の愚痴の「聞き役」であった。

 友人たちからは、ネコは飼わないのかとよく聞かれたこともある。ベルリン郊外に住む友人のアンネッテとトーマスのところには、ネコがたくさんいる。しょっちゅうネコの赤ちゃんが生まれている。何度も何度も、生まれたよと聞かされる。でもぐっと堪えて、また飼ってもいいんじゃないのという内声を抑えていた。

 2014年の晩夏だった。

 トーマスから、4匹生まれてちょうど乳離れしたところ。何匹か引き取らないかという誘いがあった。5月29に生まれたという。4匹とも白黒で、オス1匹とメス3匹だ。

 もし飼うとすると、1匹よりは2匹のほうがいいと思っていたのでちょうどいい。でも、飼っていいものかどうかの躊躇もあった。トーマスからは、一度見にきてはどうかといわれていた。でも、見に行くのはもらいにいくのと同じ。見たら、絶対ほしくなる。

 連れ合いの三枝子と話し合い、一緒に見に行くことにした。電車とトラムで1時間かけ、トーマスたちのところにいった。ネコを入れるカゴを持っていた。

 2匹なら、メスとオスそれぞれ1匹がいいなと、三枝子が話をしていた。

 いたいた。ちびちゃんたち。

 メス1匹だけほとんどが白で、すこし黒が混じっているだけ。それ以外は、みんな白黒のネコでよく似ている。1匹1匹紹介される。白のメスネコはきゃしゃな母ネコ似。後は、かいわいをうろうろしているボスネコの父ネコ似だ。ちょうど庭に座っていた。あれが父ネコだといわれた。

 オスは決まったけど、もう1匹メスをどれにするかで迷った。白黒の1匹が咳をして弱っている感じ。ぼく自身は、その弱っているネコをもらったほうがいいのかなとも思っていた。トーマスたちのところにはネコがたくさんいるので、すべてのネコの様子に注意するのは無理。引き取れば、ぼくたちのところにいるほうが、より気配りできるのではないかと思っていた。でも、トーマスは止めたほうがいいだろうという。

 そのネコは、あれから1カ月ほどして亡くなったという。

 白黒のオスと区別しやすいように、白いメスをもらうことにした。アンネッテは、白い方が日本人好みだと思っていたという。その通りになった。アンネッテは、日本学を専攻し、京都に留学していたこともある。

 トーマスたちのところ出る時は、もう暗くなっていた。

 帰宅するまでの電車の中、新しい家族となるネコたちは、カゴの中でミャーミャーと鳴きながら暴れ回っていた。

2019年4月29日、まさお

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