遺言書か遺書か
自分らしく死ぬために
遺言書を自筆で書く場合、青色で書いてほしいといった。黒で書くと、オリジナルかコピーか簡単に判別できない心配があるからだ。
カラーコピーが簡単にできる時代では、そういうのは時代遅れかもしれない。しかしドイツでは自筆のものや署名は、青色でするのが普通になっている。黒が一般的な日本とは異なるので、注意してほしい。
ぼくは友人から遺言書があるといわれていて、友人の死後に鉛筆で「コピー」と書かれていた遺言書を見つけた。それをコピーだとばかり思って、あちこちひっくり回してオリジナルを探したが見つからない。偶然その『コピー』を裏返してみて、インクが染み込んでいるのに気づいた。それがオリジナルだった。
1週間ほど遺言書のオリジナルを探したが、時間を無駄にしただけだった。高齢になるといろいろ思い違いもある。遺言書はしっかり、管理しておかなければならない。
もう1人の友人の場合は、遺言書と思われる書状に「遺書」と書いてあるのに気づいていなかった。それが遺言書なのは明らかだったので、内容ばかりを気にしていた。
日本語の遺言書をドイツ語に翻訳してもらう時に、翻訳者から「遺書」と書いてあるといわれて、はじめて気づいた。本人が亡くなっているので、もう直しようがない。
「遺言書」はドイツ語では「Testament」。「遺書」は「Abschiedsbrief」となる。遺言書の翻訳に「Abschiedsbrief」となっていては、裁判所はそれを遺言書と認めてくれない。遺書には法的効力がないからだ。
遺言書と遺書の違いは、何かが問題になる。遺書は、生前の自分の意思を伝える手紙で、法的には効力がない。ドイツ語では遺書に、「Brief(手紙)」とあるからわかりやすい。それに対し遺言書は、死後に法的効力を持たせることを目的に書き残す自分の意思表示のことだ。遺言書では、負債を含めた財産の相続に関して自分の意思を伝える。ここでは、財産をどう分割するのか、あるいは相続権のある人物を認知したり、排除したりこともできる。
さらに、婚姻関係のない内縁の妻とそのこどもを認知することができる。委任状がない場合、後見人を指定するほか、遺産相続に関してその執行者を指定することもできる。
この区別をしっかり把握して遺言書を作成しないと、法的効力がないとして、遺言書とは認められない。この点には、しっかり注意する必要がある。
さて「遺書」と書かれていた友人の『遺言書』は、どうなったのか。内容が遺言書であることがはっきりしていたので、ドイツ語にする翻訳者にお願いして、ドイツ語の遺言書である「Testament」と翻訳してもらうようにお願いして済ませた。
翻訳には現物の遺言書のコピーを添付するが、こちらの裁判所では気づかないだろうと思った。ただこの場合見つかると、文書偽造と犯罪になる心配もあった。
遺言書は正確に書いてほしい。自信がない場合はすでに勧めたが、公証人に遺言書の作成と公証をお願いしたほうが安心だ。自筆の遺言書にしたい場合でも、文章は公証人に相談して作成してもらって、それをそのまま自筆で清書したほうがいいかと思う。
相続人が1人なら、「相続人は誰々だけです」と書いてあれば問題ないが。
2024年2月03日、まさお
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関連サイト:
日本では遺言書の書き方ガイドがある(相続会議、朝日新聞社運営のポータルサイト)
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