相続か贈与か、その控除額はどうなる

自分らしく死ぬために

 遺言書を残しておく一つの重要な意味は、自分の財産を誰に相続してもらうか、自分の意思を伝えておくためだ。

 自分がまだ日本国籍を保有しておれば、ドイツで亡くなっても原則として、日本の相続が適用される。法定相続の規定は、ドイツと日本の間でほぼ同じだと思っていい。ドイツで亡くなると、日本の本籍のあるところに死亡届を出さなければならないが、死亡とドイツに残った遺産の相続に関する手続きはドイツ法にしたがって行うことになる。

 遺言書もドイツ法にしたがって作成されていても、原則として日本でも有効になる。ただドイツでは遺言書から裁判所に相続人証明書(Erbschein)を出してもらわないと、ドイツの財産の処分できないので、その点に注意しておく必要がある。ドイツで発行された相続人証明書は原則として、ドイツでだけ有効なものだ。

 しかし相続の問題になると(ぼくのように長期にドイツに居住していると)、ドイツに残った遺産はドイツ法で相続手続きをする。ここでは相続税の控除額がドイツと日本でかなり違うので、気をつけておいたほうがいい。

 日本では、相続税の控除額は、法定相続人が一人なら3600万円だ。遺産総額がそれ以上にならない限り、相続税申告も相続税の支払いも必要ない。法定相続人が一人増える毎に、控除額は600万円増える。日本ではそれを基礎控除と呼んでいるようだ。

この写真は、昨年2023年秋に日本で撮ったもの。どこかな?

 日本では血筋よりも、法定相続人かどうかがポイントになる。それに対し、ドイツの相続税の控除額は複雑だ。

 相続人が故人の配偶者なら(結婚していなくても人生のパートナーとして登録されていればいい)、50万ユーロ(約8000万円超)、こども(義理のこどもでもいい)なら40万ユーロ、両親が生存しない孫でも40万ユーロだ。ここまでは、かなり気前がいい。

 しかし両親がまだ生存中の孫はまだ20万ユーロだが、ひ孫、両親、祖父母になると10万ユーロ(約1600万円)と減り、それ以外の兄弟や甥と姪、血縁関係のない相続人の場合、控除額は2万ユーロ(約320万円)と少ない。

 遺産額が2万ユーロを超えると、相続税申告をして相続税も支払わなければならなくなる。

 相続人を日本にいる甥や姪など、血縁関係のある相続人をと思っても、日本在住の相続人はドイツで相続税申告をして相続税を支払わなければならなくなる可能性がある。それに対し日本では基礎控除額が高いので、その必要がない可能性が高い。

 それに対しドイツでは、贈与に対してとても気前がいいことも知っておきたい。たとえば自分のこどもに対する贈与の控除額は40万ユーロ。それに加えて10年間ルールがあるので、10年後にさらに40万ユーロを贈与しても贈与税は発生しない。毎年4万ユーロを自分のこどもに贈与していけば、まったく贈与税を支払う必要がないということでもある。

 ただ贈与する毎に、贈与管轄の税務署に贈与について申告する必要がある。

 ただドイツでは相続と贈与に関して気前がよすぎると、いろいろ問題視されている。後で制度が変わる可能性もあるので、注意が必要だ。

 ぼくのように、残していくだけのお金がなければ心配はない。ただそうではない人もいると思うので、自分の残していく財産をどう相続してもらうのかも、早めに考えておきたい。

2024年3月05日、まさお

関連記事:
遺言書か遺書か
遺言書も用意しておく
代理人とよく話し合い、自分の希望を書き留めておく

関連サイト:
相続税の基礎控除とは(相続会議、朝日新聞社運営のポータルサイト)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.