代理委任状が必要
自分らしく死ぬために
前回、代理人を選ぶポイントについて挙げた。ただ代理人を選んだからといって、それでいいわけではない。
代理人に委任状を出し、委任状を自分と代理人で保持していなければならない。
高齢になった時などに自分の代理をしてもらう委任状は、ドイツ語でVorsorgevollmacht(代理委任状)といわれる。全権を委任する場合は、General- und Vorsorgevollmacht(全権代理委任状)という。
いずれにせよ正式の文書として委任状がないと、代理人がいろいろと手続きができないことも多い。代理人には、委任状を出しておかなければならない。
この代理委任状はよく、公証人に作成してもらい、公正証書とするべきだと思っている人も多いと思う。実際、ぼくが代理人をした2人の友人の場合も、委任状が公証人によって作成され、公正証書となっていた。
代理委任状が公正証書になっている場合、自分が自己判断できなくなった時に備えて、治療措置を事前に指定しておくPatientenverfügung(日本語では事前指示書とされているようだ)を添えて、委任状とセットになっている場合が多い。
事前指示書については、いろいろいいたいことがあるので、それは次回に回すことにする。

代理委任状は必ず、公正証書になっていなければならないのだろうか。実際には、必ずしもその必要はない。ドイツ内務省が公開している代理委任状の書式では、代理人にどういうことをしてもらうのか書面にある質問に答え、最後に本人と代理人の署名があればいいことになっている。また、自分で手書きした委任状でもいい。たとえば医師が本人に判断能力があると診断し、医師立ち会いの下で目の前にいる代理人を指名しても、代理人として認められる。
ぼくが代理人として2人の友人の面倒を見た体験からすると、家族が代理人になる場合は、委任状は公正証書でなくても、信用してもらいやすい。それに対して、家族ではない友人など第三者が代理人となる場合、公正証書になっていたほうが信用してもらいやすいと思う。特に銀行などお金に関わることで手続きをする場合、第三者が代理人だと、公正証書となった委任状を求められると思っていていいと思う。
全権を委任した場合、代理人は本人に代わってすべての法的手続きを行うことができる。特に、お金に関わる銀行とのやりとりを代行するのも大切になる。しかし銀行に関しては、取引銀行ごとに個別に銀行用の委任状を出しておくことを勧める。それは、各銀行で手続きをする。
代理人は特に、本人の住む場所を決めるほか、施設に入居すべきかどうかも判断する。延命措置を行うべきかどうかも、判断することになる。しかしこれについては、本人が事前指示書で規定している場合、代理人はそれに従わなければならない。
なおドイツでは、本人が自己判断できない時に、法的成年後見人(gesetzliche(r) Betreuer(in))をつける制度があるので、ぼくは必要に応じ、代理人が成年後見人にもなるべきだと思っている。その旨は、委任状に記載しておくべきだ。あるいは最低限、代理人が成年後見人を選定する権限を持っているようにするべきだ。
もう一つ大切なのは、委任状が本人の死後も有効であることを委任状にはっきり記載しておかなければならない。これも、忘れてはならない重要なポイントだ。
さらに、代理人がさらに第三者に委任できるようにしておくことも大切である。
これら重要なポイントは、公証人に委任状を作成してもらう場合、概ね記載されていると思う。そうでなければ、公証人ではない。だが、自分でしっかりと確認しておく必要もある。
ぼく自身は、夫婦で互いに全権委任状を出し合うことにしている。手書きで書き、死後も含めて相手方にすべてに関して全権を委任するつもりだ。
事前指示書をそれに添えるつもりはない。それについては、次回述べることにする。
2023年10月02日、まさお