アマゾン火災は、何が問題なのか

 現在、南米のアマゾンにおいて広い範囲に渡って熱帯雨林が燃えている。

 「世界の肺の危機」とか「世界的な危機」など、過激なことばで報道されている。火災の問題は、ドイツをはじめヨーロッパでは早い段階から注目され、報道されてきた。

 日本では当初、あまり注目されていなかったように感じる。G7サミットを前後して、ようやく報道されるようになった。それは多分、G7サミットの重要なテーマになったからにすぎないと思う。

 でもそれが、日本のメディア自体に環境意識が欠けているからだとすると、メディアで仕事をしている者としては悲しい。

 火災の原因については、いろいろ報道されている。ここで問題なのは、火災の数であり、規模である。その数と規模からして、いくら乾燥期といっても、自然な火災ばかりでないのは明らかだ。

 火災の原因については、メディアでいろいろ憶測されている。でも、ここでは触れない。

 ただ小さな火災はむしろ、アマゾンの熱帯雨林にとっていいことも知っておきたい。成熟した森林を若返えらせるほか、小さな植物が太陽の光を得ることができるようになるからだ。

 現在燃えている地帯は、すでに森林が伐採されて農業に使われている地域が多いという情報もある。でもぼくには、その情報が正しいのかどうか確認できない。

 ソーシャルネットワークなどでは、過去の古い火災の写真も使われているので、注意が必要だ。すでに仏マクロン大統領、サッカーのロナルド選手、俳優のデカプリオなどの著名人が、過去の古い火災写真を投稿したことがわかっている。

 これだけ騒がれだしたアマゾン火災だが、いったい何が問題なのか、ぼくたちは認識しているだろうか。ぼくのわかる範囲で、少し整理しておきたいと思う。

 まず「世界の肺」ということばだ。

 地球の酸素の20%が、アマゾンから産出されているといわれている。ここでは、熱帯雨林にある樹木が、光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を排出していることが想定されていると思う。二酸化炭素は温室効果ガスに属し、地球温暖化の原因となる。それだけに、二酸化炭素を吸収する樹木が火災によって消滅してしまうと、アマゾンの規模が大きいだけに一大事だ。

 このブログにおいても、光合成によって太陽の光エネルギーが化学エネルギーに変換され、その時に二酸化炭素を吸収して、酸素が排出されることを何回も述べてきた。

 ただ、光合成のプロセスによって二酸化炭素を多量に吸収して酸素を排出するのは、若い成長盛りの樹木である。それは、誤解してはならない。アマゾンの天然林では、樹木がすでにかなり成熟しており、枯れていく木もあるはずだ。枯れて死んだ木は、細菌によって分解されるので、むしろそれによって二酸化炭素が排出される。さらに、成熟した木は夜に、二酸化炭素を排出するという。

 アマゾンのような成熟した天然林では、二酸化炭素の吸収も排出も行なわれていることを知っておきたい。だから地球の酸素の20%がアマゾンに由来するというのは、かなりの誇張だと思う。

 だから、アマゾン火災によって「世界の肺」がなくなるわけではない。この点は、注意しておいたほうがいい。

 もちろん、アマゾンの火災によって樹木に蓄積されていた二酸化炭素が排出される。アマゾンの熱帯雨林は、地球の大きな二酸化炭素貯蔵庫だ。広大な熱帯雨林が火災で破滅されれば、温室効果ガスである二酸化炭素が多量に大気に放出されるのは間違いない。

 ただそれが、一時的に地球を温暖化させるだけなのか、長期的な影響があるのか。それについては、ぼくに分析するだけの知識も能力もない。専門家の分析に任せたい。

 火災で熱帯雨林の一部が破滅されれば、これまで安定していた生態系に変化が起きるのは間違いない。その結果、地球にどういう影響があるのかも、今後の専門家の分析を待ちたい。

 だからといって、火災後に二酸化炭素を吸収するために、人工的に植林していいかとなると、そう簡単ではない。

 人工的に植林しても、植生が単一化してしまうだけだ。森林の植生が単一になると、害虫などの被害で森林が一度に死滅してしまう危険が高まる。森林には、多様性が必要なのだ。それによって、ある特定の害虫や災害による被害が限定されるからだ。

 アマゾンでは、動植物の多様性が生態系を安定させていたはずだ。火災によってその多様性が失われてしまうと、その多様性を再生することはもうできないと思う。多様なアマゾンの熱帯雨林は、もう戻ってこない。

 火災の後に自然が草原を再生させても、むしろそれによって乾燥期において火災の起こる危険が高まるはずだ。その結果、アマゾンの自然を持続的に維持することはもうできなくなる。

 またアマゾンで暮らしている原住民の生活が、火災によって破壊されてしまうのも心配だ。原住民の生活の基盤は、自然だ。その自然が火災によって破壊される。原住民たちが今後どうなっていくのか、たいへん気がかりだ。

2019年8月26日、まさお

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.