汚染処理水と汚染土は放射性廃棄物

福一の汚染処理水問題を考える(2)

 ぼくは前回、現在問題になっている汚染処理水も汚染土を処分するのは、廃炉の一部にみなすべきだと書きました(「汚染水か、汚染処理水か」)。

 ぼくがわざわざこう書いたのは、汚染処理水と汚染土の処分において、いずれも汚染されているにも関わらず、原子力法と放射線防護の規則に基づいて放射性廃棄物を処分するのだという意識が足りないのではないかと感じるからです。

 放射性廃棄物であれば、そう簡単には海洋など放射線管理区域外に出して処分することはできません。放射線管理区域外に持ち出すには、放射性廃棄物として危険物扱いして輸送し、厳重に放射線の管理されている安全なところに移動させるか、事前に測定してクリアランス基準の年間線量10マイクロシーベルトを超えないことを確認して、放射性廃棄物から解除しなければなりません。

 汚染処理水は、事故原発敷地内に保管されているので、ぼくは放射線管理区域に保管されているのだと想定します。

 それに対して、汚染土は放射線管理区域外にあることが問題です。というのは、汚染土の発生した地域が事故原発のある放射線管理区域から飛散した放射性物質によって汚染されているにも関わらず、放射線管理区域として指定されていないからです。

福島県の避難区域では、汚染された土の入れ替え作業が行われていた

 これら汚染地域は、線量からすれば放射線管理区域に指定すべきでした。ぼくは事故後に、なぜそれが放射線管理区域に指定されないのか不思議に思っていました。取材して調べてみたところ、放射線管理区域は、法的には原子力関連設備や施設のある区域で、一定基準を超える放射線を放出する区域となっていることがわかりました。

 そのため、放射性物質が飛散した地域は、線量だけからでは、原子力法上放射線管理区域にはならないことがわかりました。

 放射線管理区域では、食事をすることも、そこに住むこともできません。でも線量からすれば、福島県の県民は原発事故後、食事をすることも、住むことも禁止される地域に居住させられていたか、今も居住させられています。

 この点が、これまではっきりと指摘されてこなかったのはとても問題だと、ぼくは思っています。

 放射性廃棄物は、法的には放射線管理区域で発生し、放射性物質を含んで汚染された廃棄物と定義されます。放射性廃棄物は法的には、クリアランス基準が超えないことが確認されない限り、放射性廃棄物として原子力法の下で放射線防護措置を講じて処分されなければなりません。

 つまり、放射性廃棄物は放射線管理区域外に持ち出して処分するには、事前に測定してクリアランス基準を超えないことが確認されない限り、放射線管理区域外で処分したり、再利用してはなりません。

 この点に、ぼくの疑問があります。

 というのは、これまでの日本政府の方針では、汚染処理水と汚染土のすべてが、それぞれ個別に現物を事前測定して放射線管理区域外で処分されるわけではありません。クリアランス基準を超えないだろうという仮説と想定の下に、放射線管理区域外で処分されます。

 汚染土の場合は、汚染濃度の基準として8000ベクレル/kgという基準が設けられています。でも10マイクロシーベルトのクリアランス基準は、汚染土の上に盛り土をするなどしてから遵守されているかどうか、確認されるにすぎません。汚染土そのもので、クリアンランス基準を超えていないことが事前に確認されるわけではないということです。

 汚染処理水処分の場合も、汚染処理水においてクリアランス基準が遵守されるというよりは、海洋に放出すると希釈されるので、クリアランス基準を超えず、環境に影響を与えないと想定されているにすぎないと、ぼくは理解しています。

 現実問題として、汚染土も汚染処理水も処分前に現物測定していちいち確認するのは、ほとんど不可能ではないかとも思います。

 でもこうして実際に測定しないで、仮説と想定の下で放射線管理区域外に持ち出して処分するのは、現物測定解除を基盤とする原子力法と放射線防護の原則に反していると思えてなりません。それが、ぼくが汚染土も汚染処理水も放射性廃棄物としては取り扱われていないと思う根拠です。

 汚染土も汚染処理水も、福一の原発事故によって発生したものです。その意味でも、汚染土も汚染処理水も福一の廃炉の一環で処分するほうが合理的だと思います。現在、汚染土と汚染処理水の処分で問題や批判がでるのは、汚染土と汚染処理水がそれぞれ別々に議論され、処分されようとしているからです。

 それを福一の廃炉全体の問題としてとらえれば、汚染土も汚染処理水も放射性廃棄物として原子力法の下で処分しなければならなくなります。

 汚染土と汚染処理水の処分では、それが大前提だと、ぼくは思っています。そうすれば、汚染土と汚染処理水を処分する新しい方法も出てくる可能性があります。

 ぼくはたとえば、汚染処理水を使って、汚染土と必要に応じて廃炉で排出される廃材を一緒にセメントで固めてしまうこともできると思います。その固化体の形を統一すれば、保管場所のスペースも節約できるし、そのコンクリート固化体も測定しやすくなります。またコンクリート固化体にしたほうが、放射性物質が飛散するリスクも小さくなります。

 実際、稼働中の原発においても、原発内で発生した汚染水を使って、原発の運転によって発生する放射性廃棄物をセメントで固めて固化体にしたりします。

 測定の結果、そのコンクリート固化体でクリアンランス基準が下回れば、そのコンクリート固化体を道路の工事現場などで再利用できる可能性も生まれます。それに対して、クリアランス基準を超えるものは、放射性廃棄物として処分するしかありません。

 こうしたほうが、汚染土と汚染処理水の処分において法的整合性が確保されます。

 ぼくが、汚染土と汚染処理水を廃炉の一環で処分すべきだとする背景には、もう一つの根拠があります。そのほうが、汚染土と汚染処理水の処分責任を誰が負うべきなのかよりはっきりするからです。

 それは、すでに前回問題提起した、福一の運転者である東電の位置付けに関する問題につながります。この問題については、次回取り上げます。

2021年1月10日、まさお

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関連サイト:
経産省のALPS処理水サイト

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