2024年10月16日掲載 − HOME − 小さな革命一覧 − 記事
ドイツ東部で極右政党が台頭するのはなぜか? (6)- テューリンゲン州の場合

2024年9月01日に行われたテューリンゲン州州議会選挙において、極右政党のドイツのための選択肢(AfD)が32.8%の得票率で、第1党となった。第2党のキリスト教民主同盟(CDU)の得票率が23.6%なので、他を引き離して楽勝した形だ。


テューリンゲン州のAfDは特に、党内でも極右の代表格とされるビイェルン・ヘッケ候補が州首相候補として選挙を戦った。それだけにこの結果は、ドイツの州議会選挙で戦後はじめて極右政党が第1党になった以上の衝撃的なものだった。


今のところ他党にAfDと連立する意向がないので、ヘッケ州首相が誕生する見込みはない。しかしAfDが議会で3分の1以上の議席を有することから、AfDは州憲法裁判所裁判官の任命など、議会の3分の2の賛成が必要な案件を否決する権限を持つことになる。


テューリンゲン州州議会選挙を前に、外国人記者会で州都のエアフルトで各党の代表候補などとリレー会見できる機会があった。ぼくはそれほど関心がなかったが、エアルフトに引っ込んだ友人にも会えるし、極右と極左のポピュリズム政党から話を聞けるのもおもしろいかと思っていくことにした。


特に、左翼党から分裂したばかりの極左ポピュリズム政党「サーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」のカチァ・ヴォルフ代表候補(女性)が、左翼党出身でアイゼナッハ市長でありながら、BSWに鞍替えしたことに関心があった。


BSWのヴォルフ代表候補は、見捨てられたようになっている過疎地の住民に生活を取り戻すため、政治改革が必要だと主張する。しかしBSWは結党したばかりで党に地盤がなく、党員もいないプラットフォーム政党。州政治とはまったく関係ない、ウクライナへの武器供与停止など外交問題を中心にして州選挙の政策マニフェストとしている政党に、いったい何ができるのかといいたくなった。


それでは、現実的な政治をしてきたアイゼナッハ市長としての手腕は生かされない。主張は実現性がなく、ポピュリズム的だと感じた。しかし選挙では15.8%の表を獲得。第3党と画期的な結果をもたらした。AfD政権を防ぐには、政権入りも視野に入る。


むしろおもしろかったのは、AfDのヘッケ代表候補の代わりにきた州の党副広報だった。副広報は、AfDが極右政党だといわれるが、各党の政策マニュフェストを比較すると、各党の間に大きな違いがなく、70%は同じ政策を主張しているではないかといった。


まったくその通りだ。AfDとBSWの主張にほとんど違いはなく、中道保守のCDUにしても右翼表を獲得するため、移民問題などを中心にAfDと同じ主張をしている。違うのは、ウクライナへの武器供与の必要性を唱え、反プーチンであることだ。


一番地元州の政治について真剣に考えていたのは、社民党(SPD)のマイアー代表候補だった。だが政治家としては地味で、アピール力に欠けていた。選挙では6.1%の表を獲得し、かろうじて議席を確保した。しかし第5党と、州議会の最少政党になってしまった。


左翼党からBSWが分裂したことで、左翼党のラメロウ州首相に再戦の見込みがないことははっきりしていた。会見でもその恨みがあちこちに感じられたが、話の内容はこれまでの政権の成果を宣伝するだけで、左翼党でありながら、問題の過疎対策など弱者に関する話はまったく聞くことができなかった。選挙では結局、得票率13.1%と伸びず、野党に下野してしまう可能性が大きい。


朝から夕方近くまで、各政党の代表候補などから話を聞いたが、結局ぼくとしては成果という成果はなかった。まあ、想像していた通りだった。


ぼくはその後すぐに会見の会場を出て、友人のペーターに会うために中央駅前に急いだ。


(2024年10月16日)
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拙書『小さな革命、東ドイツ市民の体験、統一プロセスと戦後の2つの和解』
関連資料:
テューリンゲン州公式サイト(ドイツ語)
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