ドイツの極右テロ

 今月6月はじめ、ドイツ中部のヘッセン州カッセル近郊で地方政治家が自宅のテラスで撃たれ、殺害されました。

 捜査当局はそれから約2週間後、容疑者の男を拘束します。男は、NSU(国家社会主義地下組織)による移民系市民連続殺人事件に関する文書にも名前が挙がっていたと見られ、極右テロ組織に関係ある人物と見られています。

 NSU移民連続殺人事件は、2000年から2006年の間にドイツ大都市において移民系市民9人が暗殺された事件。当初は、極右的な背景があるとは見られていませんでした。しかし、同じく犯行に至った警察官暗殺事件に関連して、偶然極右テログループの犯行とわかった事件でした。

 ドイツ東部出身の若者3人が主犯とされています。その他にも協力者がいると見られますが、その全容はいまだに解明されていません。

 6月に殺害された地方政治家は、難民受け入れを擁護、促進した政治家でした。事件後SNS上で、極右思想を持っているとみられる人たちが故人を中傷するコメントを発信していました。こうしたことから、事件が極右思想と何らかの関連性があるのではないかとも疑われていましたが、やはりという感じです。

 難民受け入れを擁護する政治家やジャーナリストなどにも、いろいろな形で殺害するとの脅迫メールが送られていることも発覚しています。

 ぼくは今回、ケルン市長とアルテーナ町長の2人宛に6月19日に送信された殺害脅迫メールを入手しました。ケルン市長とアルテーナ町長はともに難民受け入れを擁護し、数年前に極右的な思想を持った人物に襲われ、重傷を負いました。

 脅迫メールには、「あなたたちの命は、2020年で終わるだろう。われわれは、同志たちにあなたたちを除去するお金を出すことによって、あなたたちを殺害する」とあります。

 メールにはさらに、国家を倒して、難民を擁護するような政治家やユダヤ人、外国人を排除することを目的にしているとあります。

 メールでは、自分たちを上等人間として、その他を下等人間とするなど、ナチスの思想とよく似たところがあります。差出人は「クーデター楽団」とあり、最後に「xxxヒトラー」と書かれています。

 クーデター楽団から脅迫メールが届いた政治家は、これまでにも左翼党の政治家などかなり広い範囲に渡っているものと見られます。極右テログループには、殺害者リストも存在するといわれます。

 どの国においてもそうですが、国の秘密警察や警察など公安・治安組織が極左と左翼にはとても激しいが、極右や右翼にはとても甘いという問題があります。

 それは、公安・治安組織に右翼、極右的な思想を持っている人やそのシンパがいるからです。ドイツでは昨年、ドイツの国内秘密公安組織である憲法擁護庁の長官が、極右・右翼の行動を擁護する発言をして、辞任しました。

 NSUによる連続殺人事件においても、重要な証拠となる書類を事前に処分してしまうなど、関連州の憲法擁護当局のずさんさが明らかになりました。

 しかしそれでも、ドイツは極右に対して十分な対策を講じていません。ドイツの場合、内務大臣は現在、保守的なバイエルン州のキリスト教社会同盟から出ています。憲法擁護庁長官の辞任問題でも、内務大臣は長い間長官を擁護していました。

 ドイツに限らず、こうした公安・治安組織における組織上の問題は、日本も含めて各国でよく見られる問題です。

 それが、右翼・極右勢力をより勢いづかせています。

 ぼくはこのブログで以前、世界が現在、1930年代にとても似た時代になってきていると書きました(「社会が右傾化する」)。今、時計が着々と1940年代に向かって進んでいるように思えてなりません。

 それに対抗して、今何ができるのか。一人一人が考えたいと思います。

(2019年6月21日、まさお)

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