こどもの人権を守る

 こどもに対する虐待や性暴力、児童ポルノ、先生による体罰、生徒同士のいじめによる自殺など、こどもが被害者となるニュースが絶えません。ドイツでは、牧師など聖職者による性暴力によって、長い間こどもが犠牲になっていた過去も明らかになりました。

 実は先月2019年11月、国連で「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が採択されて30年になりました。条約は、こどもを一人の人間とし人権を認め、国際的にこどもの基本的人権を保障しようとするものです。

 本来、こどもはどこで生まれようが、その時点から人として人権を持ち、公平、平等に成長し、発達していかなければなりません。そのために、特別な保護が必要なのはいうまでもありません。こうしてこどもは、生まれたと同時に社会に参加しているのだともいえます。

 こどもは、その人種や宗教、性別、障害、経済的な格差、意見の違いなど、いかなる理由があっても差別されてはなりません。

 しかし、現実はそうではありません。

 工業国と途上国の格差、親の経済力の格差、武力紛争などによって、貧困にさらされているこどもたちがたくさんいます。また、シングルマザーの元で育つこどもの貧困も顕著になっています。

 たとえばシングルマザーの問題は、男女平等に関わる問題でもあります。男女間にある給与の差などの差別が、こどもの人権に影響を与えています。

 これは、男女平等とこどもの人権が連結しているということです。

 今、マドリッドで地球環境サミットが行われています。気候変動に危機感を抱く若者たちには、将来の地球環境のために自分たちの意見をいう権利があります。そして大人には、その意見を聞いて次の世代のために対策を講じる義務があります。

 これは、環境保護とこどもの人権がつながっているということです。

 本サイトでは、放射性廃棄物を処分する問題において、世代間で民主主義を成り立たせることができないという問題について書いたことがあります。

 大人は、自分の今生きる時代のことだけを考えていてはいけないのです。

 こどもの人権に関わる問題は、単に日常のことではなく、政治のことでもあることがわかります。

 ドイツでは今、ドイツの憲法である基本法にこどもの人権を明記すべく、憲法を改正することを検討しています。その諮問案が、今年2019年末にまで提示される予定です。

 こどもの人権を憲法によって保障することで、憲法と国際的な子どもの権利条約を結びつけるとともに、こどもを保護する政治的メッセージを発しようとするものです。

 こどもの人権を守るとは、単に今のことを考えるのではなく、未来についても考えるということです。そうした視点がもっと広がらなければなりません。

(2019年12月06日、まさお)

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関連リンク:
児童の権利に関する条約
児童憲章

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