コロナ対策に反対するコロナデモの次は何か
ドイツでは、昨年2020年11月からロックダウンが続いています。ロックダウンの規制が緩和される毎に、リバウンドで感染者が増えました。現在は新感染者数が減り、7日間の10万人当たりの新感染者数も50人以下となりました。
1カ月前までは、これまで改善するとは、ちょっと信じられませんでした。
現在、新感染者数が減るにしたがい、ロックダウンも緩和されています。レストランはようやく、屋外での営業が認められました。コンサートなどもまもなく、制限付きで再開されます。しかし、すでにワクチンを2回接種しているか、当日の抗原検査で陰性が証明されないと、その規制緩和の恩恵を受けることができません。
ぼくはビアガーデンでビールを飲むために、何回も抗原検査を受けました。
先週末、ドイツは聖霊降臨祭（イースターから50日目）で祝日でした。それを目当てに、コロナ対策に反対するグループが、ベルリンで大きなコロナデモを予定していました。
しかし、ベルリンの警察当局はデモを許可しません。これまでのコロナデモで、マスクを着用しないうえ、ソーシャルディスタンスもとらないなど、感染拡大防止対策が無視されるのがわかっていたからです。デモ主催者は提訴しました。しかし裁判所は、デモを許可しなかったのは正当だとの判断を下します。
デモは禁止されたものの、コロナ対策に反対する市民がベルリンにたくさん集まってくると予想されました。ドイツ全国から、警官が応援にきます。ぼくが取材したところには、バイエルン州やバーデン・ヴルュテムベルク州、ヘッセン州からの警官がいました。
ただ当日になってみると、コロナ対策に反対する人たちが集まると見られたブランデンブルク門やティーアガルテン周辺では、警官と警備車ばかりが目立ちます。コロナ対策に反対して集まったのは、極少数でした。ぼくが見た時も、ひょっとしたらそうかなという人を数人見かけた程度でした。
この間、コロナデモグループのYouTubeアカウントも削除されました。アップされた動画がフェイクだと判断されたからでした。
ようやく、コロナデモの化けの皮がはがれてきたかという感じがします。新型コロナはデマなどと主張して、コロナ対策に反対していた人たちが、ワクチン接種を受けているともいわれます。
コロナデモグループは各地でコロナデモを行い、参加者数も操作するなど、かなり大風呂敷を広げてきました。しかし、社会に大きな影響を与えるほどの運動までには発展しませんでした。むしろ、単に迷惑と思っていた市民のほうが俄然多いと思います。
コロナデモの取材を続けてきたドイツ公共放送ARDの記者オラーフ・ズンダーマイアーさんは、コロナデモに集まったのは全国で合わせても数万人程度と推定します。オラーフさんは、コロナデモグループが陰謀論者や極右グループと連携したことも、社会から支持されなかった背景だといいます。
ここ10年くらいの間に次々に現れる抗議デモで共通しているのは、反政府主義、反エリート主義、反メディア主義です。コロナデモも同じだったと思います。抗議する対象が違っても、抗議デモではよく同じ顔を見ました。
反政府主義、反エリート主義、反メディア主義から、いずれ新しいテーマで新しい抗議デモがはじまるのは間違いないと思います。さて、次のテーマは何でしょうか。
ぼくは、気候変動をウソだといって気候保護対策に抗議してくるような気がします。
ドイツでは今、政治上最も重要な課題は気候変動です。これから、気候変動対策によって経済、社会が大きく変わることが予想されます。それによって、たくさんの人が職を失うことが心配されます。反政府主義、反エリート主義、反メディア主義にとって、ちょうど受け入れてもらいやすい巣ができていきます。
たとえば、ペギーダ（西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者）による反イスラム運動は、難民問題前後に生まれています。コロナデモも、コロナ禍に登場しました。問題が社会に最も影響を与えそうなところに、反政府主義、反エリート主義、反メディア主義による抗議デモが生まれます。
その点からすると、次は気候変動問題だろうと思えてなりません。
ドイツではコロナ禍においても、民主主義、立憲主義、法治国家がとても頑丈に社会に根付いていることがはっきりしました。気候変動問題は、世界の将来を決めるとても重要な課題です。それだけに、全体として冷静なドイツ社会が気候変動ウソデモによって大きく揺らぐことはないと思います。
でもこの問題は、構造改革とも関係するので、ちょっと手強い気もします。
（2021年5月28日、まさお）
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関連サイト：
ドイツでコロナ対策に反対してデモするグループのサイト（ドイツ語）
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