核兵器禁止条約、ドイツ新政権がオブザーバー参加するかも
核兵器禁止条約が国連総会で採択されて、4年経ちました。条約が発効するのに必要な50カ国が批准して、ちょうど1年です。条約は、今年2021年1月22日に発効しました。
ドイツはNATO加盟国。NATOの核の傘の下にあり、核兵器禁止条約を批准すると、集団防衛を基盤にする北大西洋条約機構(NATO)に違反してしまいます。だからドイツは、条約を批准できません。
ドイツには今、ドイツ西部にあるドイツ空軍ブュッヒェル基地に核兵器があります。これは、NATO加盟国米国の戦術的核兵器です。ただ米軍ではなく、ドイツ空軍の戦闘機によって戦場で使用されることになっています。
ブュッヒェルの核兵器については、ドイツには長い反対の歴史があります。2005年に誕生した第一次メルケル政権で外相を務めたヴェスターヴェレさん(自民党)も、ドイツの国土からの核兵器廃絶を求めた一人でした。
しかし、何も変わりませんでした。
ドイツでは、16年続いたメルケル政権に終止符が打たれました。メルケル首相は公式には退任し、新政権ができるまで代行しているにすぎません。社民党と緑の党、自民党の3党が今、中道左派政権樹立に向けて連立協議を行っています。
9月の連邦議会選挙とその後に続いた連立事前交渉においては、外交問題についてほとんど語られませんでした。新政権の外交政策がどうなるのか、あまり漏れてきません。
しかし、社民党と緑の党の左派系に、核兵器廃絶に務めたこともある自民党が連立すれば、核政策において何らかの変化を期待したくなります。
ちょうど、元連邦環境相で、緑の党連邦議会議員団で外交問題の責任者となっているトリティンさんに質問できる機会がありました。核兵器禁止条約問題をどうするのかについて、聞いてみました。
トリティンさんは、ドイツがNATOの核兵器の傘の下にいる限り、核兵器禁止条約を批准することはできないとします。ドイツにある戦術的核兵器については、ロシアにまで使用域を広げるのではなく、東欧諸国だけに限定するとします。
ロシアを刺激しないためです。緑の党が政権に入れば、ブュッヒェルにある核兵器の米軍への返還を主張するのではないかともいわれました。しかしトリティンさんの発言から、緑の党は現実的で、今、そこまで考えていないことがわかります。
現実問題として、ドイツが核兵器をブュッヒェルから撤退させると、ロシアに近いポーランドが核兵器を望むに決まっています。米国としては多分、それを望んでいるはずです。
でもそうなると、ロシアが黙っていません。NATOとロシアの関係がより険悪になり、ただでさえ、仲の悪いヨーロッパとロシアです。ヨーロッパの安定にヒビが入りかねません。
となると、ドイツで中道左派政権が生まれても、核政策は変わらないのでしょうか。
トリティンさんによると、3党の連立協議においてはもちろん、核政策を検討しているといいます。その一つの可能性として、ドイツが核兵器禁止条約にオブザーバー参加することを挙げました。
オブザーバーが、核兵器禁止条約締約国会議においてどの程度のことができるのかは、まだ決まっていません。単に傍聴するだけなのか、意見もいえるのか。それは、条約発効後1年以内に開かれる第一回の締約国会議で話し合われる予定です。
ドイツが実際に、オブザーバー参加することに越したことはありません。でもぼくは、3党の連立協定に、オブザーバー参加を検討するくらいでもいいから記述してほしいと思います。
被爆国日本でさえ、米国の核の傘に守られているからと、批准どころか、オブザーバー参加にさえ逃げ腰です。そこにドイツがオブザーバー参加を検討と入れば、それなりのインパクトがあると思います。日本も被爆国として、おちおちしておれないと思います。
岸田首相の選挙区は広島市にあり、岸田家は広島出身です。でもこの首相では、核問題では何も期待できないでしょう!それならドイツから、少しプレッシャーをかけてほしいですよね。
(2021年10月29日、まさお)
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関連サイト:
「核兵器禁止条約」の概要(広島市の公式ホームページ)
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