日本の選挙制度は民主主義の原則に反する

 日本では2021年10月31日、衆議院議会選挙が行われました。ぼくは衆議院と参議院の選挙が行われる毎に、投じられた票が平等に扱われていないと思えてなりません。

 というと、選挙区毎の1票の格差のことかと思われるかもしれません。いやぼくはそれ以前に、日本の選挙制度自体に大きな欠陥があると思っています。

ドイツの連邦議会議事党正面には、「国民のために」と書かれている。国会とは、社会の多様性を反映し、国民のために活発に議論する場である。写真は、気候変動対策を求めて連邦議会議事堂前でデモ集会する市民たち

 日本の国政選挙は、小選挙区制といわれます。国政選挙では、小選挙区と比例区に投票します。小選挙区では、選挙区エリアを細分化して、選挙区で当選できるのは1人だけとなっています。これが、小選挙区制の基本です。

 ですから、小選挙区では1票差で勝とうが、5万票差で勝とうが勝ちは勝ちです。負けた候補者に投票された票はすべて死に票になります。

 極端にいえば、小選挙区が300あって、そのすべての選挙区でA党の候補者が1票差で当選しても、A党は300議席を獲得します。その時300選挙区のすべてで、B党候補者がA党候補者に1票差で負けたとしましょう。その時A党とB党の得票数には、300票の差しかありません。しかし議席数には300対0と、極端な差が出ます。

 比例区は本来、小選挙区において落選した候補者に投じられた票を生かすためにあるべきものです。そうしてはじめて、小選挙区と比例区のある意味が生まれます。比例区では当選者が、各政党の得票率に応じて配分されます。ここでは政党に対する得票率配分が、小選挙区における票の不平等を緩和できるかどうかが、重要なポイントです。

 ところが日本の選挙制度では、小選挙区と比例区がまったく分割されています。これが、日本の選挙制度の根本的な問題です。ですから比例区があっても、比例区は小選挙区の欠陥を補正できません。

 それに対してドイツの選挙制度では、小選挙区と比例区がリンクして、国会の議席数は比例区における各政党の得票率が反映されるように配分されます。ただそれでは、国会の総議席数が、小選挙区の選挙結果に左右されるという問題があります。

 たとえば300の小選挙区においてA党が1人勝ちしても、比例区での得票率が30%だったとしましょう。その場合、国会の総議席数は1000議席とせざるを得ません。小選挙区の当選者の議席を剥奪することができないからです。A党以外の政党が、比例区で多くの議席を獲得します。

 ただドイツの場合、小選挙区の結果如何で、国会の議席数が爆発的に増えるリスクがあります。それに対してはすでに、憲法裁判所が選挙制度の改正を勧告しています。

 でもこうして小選挙区と比例区をリンクさせないと、小選挙区における1票の価値の差を緩和できません。日本の選挙制度では、小選挙区で当選者以外に投票された票はすべて死に票として、捨てられます。この制度では、投票の多様性が議席数に反映されず、無視されます。

 それに対して中選挙区制のように、一つの選挙区に何人も当選者がおれば、投票の多様性が議席数に現れます。しかし1人区しかない小選挙区では、それは不可能です。

 今の日本の選挙制度の基本は、勝つか負けるかです。負けたほうに投票された票の重みは一切、配慮されません。

 これは民主主義とは、多数決をして、多くの票を取ったほうが勝つものだという誤解から生まれています。

 しかし民主主義とは、異なる多様な意見をできるだけ多く反映させるためにあるものです。お互いに得るところは得て、譲るところは譲る。それで、お互いに納得できる結果を導き出します。それが、民主主義の原則です。

 その結果、決まったことには異なる意見が盛り込まれます。そうして政治に、社会の多様性を反映させます。それが本来、選挙制度の役割であるべきです。

 しかし今の日本の選挙制度では、たとえA党が比例区で300議席中100議席と、33%程度しか得票できなくてもでも、小選挙区で一人勝ちして300議席を獲得すれば、全体で400議席と、3分の2の議席を確保できます。でもそれでは、社会にいろいろな意見な持っている市民がいることが議席数に反映されません。政治が社会の多様性を無視します。

 今の選挙制度が続く限り、日本ではいくら投票率が上がっても、自民党が一人勝ちしてしまう可能性が大きいともいえます。政権交代も起こりません。それが政治をつまらないものにし、政治への無関心、不信を招きます。投票にいかない有権者が増えるだけです。

 政権交代が起こらないと、どういう結果をもたらすのでしょうか。

 それは、社会の利益の流れる構造が常に同じになるということです。日本のように政権交代が起こらず長期政権が続くと、その利権構造が固まってしまいます。そうなると、社会はもう動きません。変えるのがとても難しくなります。社会はいずれ、活性化を失い、停滞します。

 これって、本当に民主主義ですか。

 違います。民主主義は政権交代がないと、機能しません。社会の利益も分配されません。岸田新首相は、「対話と再分配」の政治を唱えています。しかし政権交代が起こらず、利権構造の固まってしまった日本で、それは幻想だといわなければなりません。

 民主主義の本来の姿を知らないから、そういえるのだと思います。口先だけの詭弁にすぎません。

(2021年11月02日、まさお)

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関連サイト:
衆議院選挙制度に関する調査会(衆議院のサイト)

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