誤ちを認め、軌道修正する文化
ぼくたちは今、重大な過渡期にいます。
そういうと、大げさなと思う人もいると思います。しかし、気候変動の問題、社会の右傾化、ポピュリズム政党の台頭、差別、戦争の拡大、難民問題、新しい冷戦への危機、民主主義の危機など、ぼくたちには直面している問題がたくさんあります。
たとえばそのわかりやすさから、気候変動の問題を例に取り上げてみます。
気候変動は、産業革命後に人類が石炭や石油などの化石燃料を使うことを覚え、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出し続けてきたことに起因します。しかし産業革命当時には、化石燃料を燃焼させることによって発生する問題を見通すことができませんでした。
しかし化石燃料がなければ、現在の豊かさはもたらされなかったと思います。同時にそれとともに、貧富の差も拡大しました。
気候変動に直面している現実を見ると、エネルギー源を化石燃料から再生可能エネルギーに転換しなければなりません。政治と社会の一部は、それに気づきました。
しかし社会全体では、そのために必要な頭の切り替えができていません。たとえその必要性がわかっていても、それによって自分の今の生活に影響が出ることに大きな不安に感じています。
その不安を利用するのが、ポピュリズムです。単純な論理で、社会が必要とする改革を批判、否定し、問題の本質を単純化して社会を扇動します。

それと同時に社会と政治は、この過渡期に社会がどういう方向に進むのか、個々に決断しなければなりません。しかしその決断がすべて、正しかったのかどうかはわかりません。その正当性はそれを決断する時点ではなく、むしろそのずーと後にならないと判断できません。
この問題の構造は、ぼくたちが抱える問題すべてに関わっていると思います。戦争も戦争が勃発すると、ポロパンダによって戦争の実態が伝えられません。その結果、戦争が長期化します。戦争が終わってはじめて、その残虐性に愕然とさせられます。
日本の戦後問題もここにあります。日本の場合は、日本の戦争責任をあいまいにして、正式に謝罪できないでいるから、日本社会の成長がその段階で止まっています。
同じことが、技術開発についてもいえます。
ぼくたちは原子力の平和利用という甘いことばに騙されて、原子力発電を推進してきました。しかしそれに伴う汚染の問題と将来の世代に残していく放射性廃棄物の問題に、目を向けないできました。たとえそれに気づいても、問題を無視して原子力発電にしがみついています。
最新技術開発においても、同じことがいえます。
ぼくたちは今、人工知能(AI)の効能と危険についてはっきり認識できないまま、AIを促進しています。その危険が明らかになった時には、すでに手遅れになり、リスクを無視してAIにしがみつかなければならなくなっている可能性もあります。
ぼくたちの抱える問題に共通しているのは、誤ちに気づいた時に、政治と社会がその誤ちを認めて、軌道修正する勇気がないということです。それでは、問題を長引かせるところか、問題を大きくするだけです。それが、これまでの社会でした。
その結果、既存の政治や社会構造、エリートが批判されてポピュリズムで社会が動いてしまう危険を生んできました。そうして戦争を引き起こし、たくさんの命を失ってきました。
政治と社会は現在、将来の世代にも関わる重大な過渡期に直面しています。それだからこそ、政治と社会が過去の誤ちを誤ちだったとしっかりと認識して、政治が社会に納得いけるように説明して誤ちを謝罪し、政治と社会が共同で軌道修正できる社会をつくることが、より重要になっています。
そうするのは、一つの文化です。そういう文化が社会に根付いて広がっていかなければなりません。そうしない限り、人類は同じ誤ちを繰り返していきます。
重大な過渡期にいるからこそ、ぼくたち今の世代がその誤ちの繰り返しを断ち切ることに責任を持つべきだと思います。
(2023年7月02日、まさお)
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