地道な市民

格差をもたらす技術

 前回、格差が生まれるのは資本主義の構造的な問題だと述べた。この格差をもたらしているもう一つの要因が、技術なのだ。

 技術革新の名目で技術開発が行われ、次々に新しい技術が出てくる。それが経済を活性化させ、経済成長をもたらしているともいえる。

 しかし、技術は買ってもらわないと、経済上の意味を持たない。その結果、先進国の裕福な社会をターゲットにしてしか技術開発は行われない。技術は、貧しくて開発された技術の買えない人たちのためには開発されない。

 その結果、技術を買って使える層と、技術を買うことができなくて使えない層との格差がより大きくなる。単に、技術を買うことができる、できないの問題ばかりでなく、技術開発の段階から貧困で苦しむ人たちのことを考えて、そういう人たちにも使えるように技術開発が行われないということでもある。開発段階から、そのためのターゲットにはされていない。

 それは、技術開発を行う科学者、技術者たちも資本主義の下でしかやっていけないからだ。

 同じことが、薬についてもいえる。先進国で開発された新薬は、発展途上国では高くて手に入らない。エイズに関しては、アフリカなど発展途上国において危機的に広まったことで、薬価を下げて提供されている。しかし、エイズだけの問題ではない。その他の薬、ワクチン、検査機器、治療機器についても、貧しい発展途上国では高くて手に入らない。

 新薬の開発が、公的補助で行われていることが多いことを考えると、発展途上国において先進国と同等の医療を受けることができないのは、政治的な問題ともいわなければならない。

 技術開発とて同じだ。技術開発は、多額な公的補助によって行われている場合が多いのだから、国際的に連帯すれば、発展途上国の貧しい人たちのために新しい技術を使えるようにする方法があるはずだ。

 でもこれまで、世界中で市民が技術の恩恵を平等、公正に受けるような努力はされてこなかった。これも、お金を中心とする資本主義社会の構造的な問題だといわなければならない。

 それが、より大きな格差をつくってきた。

 携帯電話やソーラーパネルができてようやく、電話線や送電線のない発展途上国においても、電話や電気が使えるようになった。それだけでも、途上国の生活の質はかなり向上する。

 でもそれとて、新しい市場を開拓するための手段でしかないのではないか。

(2018年11月22日、まさお)

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