安いことには意味がある

 前述した「国際社会の構造問題」の項で、「生産コストを下げるため、移転先では環境基準や労働基準も無視される。労働者は、有害な農薬や化学薬品を使いながら、労働者の健康を無視して安く働かされる。それが、安いということの意味だ」と書いた。

 これは、経済が成り立っている構造であり、経済が格差で成りなっていることの証である。その根底にあるのは、工業国の論理による製造、生産の産業化だ。

 工業製品、繊維製品の産業化は、産業の発達とともに進んできた。特に、産業化で顕著なのは、農業と食品産業だと思う。

 農業はもともと、地元住民が地元の土地を使って営んできたもの。それを産業化することで、農業が巨大化し、価格競争が激化した。それとともに、農薬や化学肥料を使うのが当たり前になり、労働者の労働条件も格段に悪化した。

 同時に、地元で長い間営んでこられた農民による農業が破壊された。

 それは、工業国のスーパーマーケットなど上からの価格下げ圧力がとても強いからでもある。たとえば、ドイツの酪農家は牛乳の買取値が安すぎて、赤字覚悟で酪農を続けている状況だ。ドイツの屠殺場には、東欧諸国から安い労働者が集まり、奴隷のような条件で働かされている。

 食品が安いのは、日常生活にとって大切なことだ。でもピザのようなファーストフードでは、チーズに本物のチーズは使われていない。チーズの味がするように化学的につくられた化学品にすぎない。ファーストフードが安いのはなぜか、素材に何が使われているのか、まず疑ってみる必要がある。

 加工食品には、食欲をそそる化学薬品が使われていることも知る必要がある。それによって、業界は売り上げ増を図る。それが、産業化ということでもある。

 その結果は何か。こどもの肥満や、大人の成人病の増加だ。こうして、消費者の健康が破壊される。

 でも、それに対して産業は責任を負わない。病気は、健康保険などによって消費者の負担で治療される。病人が増えると、たとえば製薬業界も売上げ増を図ることができる。これは、産業化の連鎖プロセスといってもいい。

 こうして、産業は利益を増大させる。でも、産業化に伴う消費者の損害は外部コスト化され、消費者がそれを負担している。

 消費者はその現実を知って、何を買うのか選択するべきだ。

(2018年12月03日、まさお)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.