上がらない賃金

 「グローバル化と金融緩和」の項で、ものつくりの構造がグローバル化して、一つの製品をつくるのに世界中が関わっていることを書いた。その結果、製造コストを上げないようにするため、賃金を上げることもできなくなっている。

 グローバル化で人の移動がより自由になって、安い外国人労働者を国内で採用しやすくなっている。日本には技能実習制度というのがあるが、それは実習生と称しながらも、ひどい労働条件で安い労働力を使う制度といっても過言ではない。

 その結果、国内で自国労働者の賃金も上がらないし、外国人労働者との間で賃金に格差も生まれている。

 それが、国内消費に悪循環をもたらし、金融緩和を余儀なくされる一つの論理である。だが、この構造から抜け出すことができない。

 それは、グローバル化で国際競争が激化しているからともいわれる。でも、本当だろうか。

 ものつくりにおいてグローバル化が進んで、みんなの賃金が上がっていないかというとそうではない。グローバル化が進めば進むほど、資本もグローバル化される。クローバル市場で活躍する企業は、それだけ国際化した資本に対する依存度が高くなり、国際資本家の利益を優先せざるを得なくなる。

 国際資本家にとって、国内で雇用が維持されようが、喪失されようが関心はない。とにかく、利益が上がればいい。利益を上げた社長や取締役の給与はその成績によって、どんどん引き上げられている。その結果、企業トップ管理職の給与ばかりが上がり、一般労働者との賃金格差が大きくなる。

 これは、利益が上がっているにも関わらず、利益が正当に分配されていないことを示している。一般労働者の賃金が上がらないのは、国際競争が激化しているからではない。投資した資本でできるだけ利益を上げたいという投資家の欲と、その欲に仕える管理職の欲のためだ。

 その結果、国内ではどうなるのか。

 20世紀後半の経済成長によって形成された中流階級層がしぼみ、格差がより拡大している。

(2019年3月07日、まさお)

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