地道な市民

国境がなくなる

 これまでは、主にサプライチェーンがグローバル化することについて書いてきた。これは、ハード面だけの動きだ。

 でも、グローバル化するのはそれだけではない。ものづくりでは、研究開発やプログラミングなどのソフト面もアウトソーシング化され、グローバル化されている。

 今世界はいろいろな面で、グローバル化で国境がなくなろうとしているといってもいい。

 インターネットにも、国境はない。

 ネット上に国境がないので、ネット上で得られた利益に対してどこで課税するのかが問題となる。現在、それに対する規制がない。だから、アップルやグーグル、アマゾン、フェイスブックなどは、本社のある米国でしか課税されない。

 そこに今、不公平が生まれている。

 ネット企業の顧客には国境がないので、実際に利益が発生した場所では利益が残らない。そのため、利益の発生した国では課税のしようもない。それによって、利益が一部企業、国に集中してしまい、格差が拡大している。

 それに対処するには、たとえば各国でネット企業に対してデジタル税を課税することだ。ヨーロッパでは、オーストリアとフランスが独自にデジタル税を課税することを決定した。

 ただネットには国境がないだけに、各国が独自に行うのではなく、国際的なルールが必要だ。でも米国がそれに反対して制裁措置に出る可能性があることから、国際的にはどうすべきかでまとまっていない状態が続いている。

 人の移動も、グローバル化されている。高齢化社会で、若い外国人労働者を必要とする工業国が増え、外国人労働者が各国国内で就業できるチャンスが増えてきた。

 ただそれによって、国内で外国人に職を取られて失業するのではないかと心配する人も増えている。

 こうしていろいろな分野において国境がなくなればなくなるほど、実生活への影響や不均衡が生まれるとの心配が増える。国境がなくなればなくなるほど、国境へのノルタルジー、憧れが強くなるといってもいい。

 それに伴って、自国に対する思いが強くになり、国家主義が台頭する危険が生まれる。それが、今の状況ではないだろうか。

(2019年5月02日、まさお)

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