プラットフォームの奴隷となる労働者

 ドイツ東部ライプツィヒにあるAmazon発送センターで、労働者の抗議デモがあるというので取材したことがある。

 抗議デモは、発送センターの昼休みを利用して発送センター前に労働者が集まってくる形で行われた。昼休みを利用するのは、Amazonでは労働者の動きが秒単位で管理され、1秒でも出勤が遅れるとペナルティが課せられ、解雇される危険があるからだ。

 抗議デモは、業界の労働組合ヴェルディが支援して行われた。発送センターからシフトで出てくる労働者に、労組側の用意する屋台のスタンドから紅茶やソーセージなどが振舞われていた。

 デモは会社側に対して、いつでもストライキをする可能性を示唆しながらも、ストライキまではしない方法で行われる。

 取材中、アジア系の若者たちがたくさん発送センターから出てくるのに気付いた。なぜかと思ったら、会社側がストライキを想定して、そのための予備要員としてアルバイト学生を用意しておくのだという。ストライキはせず、予備要員が不要とわかると、アルバイト学生たちは退社させられるのだ。

 こうして、労働条件の改善や賃金アップを求めて、会社側にプレッシャーをかける。

 発送センター前に出てくる労働者と、話をすることができた。

 それでわかったのは、発送センターで働く労働者は、大きく2つに分けることができる。一つは、発送センター倉庫内の棚から注文された製品を取り出す労働者。ピッカーといわれる。それに、発注された製品を段ボールにつめる労働者だ。

 ピッカーは、勤務時間中、1キロメートル長もある倉庫内を歩きっぱなしだ。途中、休憩している暇はない。自分の判断で休憩すると、ペナルティが課せられる。

 段ボールつめ係は、ベルトコンベアの前でいつも同じ姿勢で製品をつめなければならない。同じ姿勢で働くのがとてもつらく、たいへん過酷な作業だ。安全のために、鉄板で防護された安全靴をはいて作業するのも、とても苦痛だという。

 ピッカーも段ボールつめ係も、誰と話をしても、過酷な労働でからだはもうボロボロだといった。

 Amazonはいずれ、ピッカーも段ボールつめ係もロボット化するつもりだろう。会社側はそこまでの過渡期を、過酷な労働によって労働者を酷使する。それも、安い賃金でだ。

 労働者たちはさらに、会社側による労働者の監視と管理がとても厳しく、会社側の規範に反すると、有無もいわせずに解雇される。労働者の扱いを「奴隷のようだ」ともいった。

 労働者たちは、それに抵抗して改善を求めている。

 労働者の抗議デモを支援する労働組合ヴェルディのトーマス・シュナイダーさんによると、「(通販業界でも)Amazonの賃金はまだいいほう。でも、最大手のAmazonで改善を求めていくことで、他の中小事業者にもプレッシャーをかけるのだ」と説明する。

 米国企業のAmazonは、ドイツに進出した後も、企業に義務つけられる労働者代表の設置と労働協約の締結を長い間、拒否し続けていた。しかし、労働組合ヴェルディとの長い労使闘争の末、ようやく労働協約を締結することで合意した。

 それでも、労働者の労働条件は改善されない。労働者の権利を守るため、長い戦いが続いている。

(2019年10月03日、まさお)

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