プラットフォームによって増える「個人事業主」

 Amazonは、オンランショッピングのプラットフォーム。Uberは、タクシーに代わる配車のプラットフォームだ。さらに最近は、レストランなどから飲食を受け取って宅配代行サービスをするプラットフォームも広がっている。

 これらプラットフォームでは、実際にプラットフォームの末端で宅配や運転する労働者は、プラットフォームと雇用関係を結んでいない。「個人事業主」として、プラットフォームにサービスを提供する。

 Amazonの場合、独自の宅配サービス会社によって宅配したり、第三者の宅配事業者に商品の宅配を委託する。ただその場合でも、実際に宅配している労働者は、宅配事業者との間に雇用関係にない場合が多い。

 こうして、プラットフォームビジネスが拡大するとともに、個人事業主として個人で働く労働者が増えている。

 ここで、プラットフォームは個人事業主として働く労働者を厳しく管理し、個人事業主には自由に自分で判断する権限はなく、プラットフォームの指示にしたがって働くだけとなっている。

 これでは、実質的に被雇用者と変わらない。でも雇用関係がないから、個人事業者となる。名目上、「個人事業主」になっているにすぎない。

 それによって、プラットフォームは人件費を削減するばかりか、労働者に対する社会保険負担を回避している。

 プラットフォームによって、個人事業主として自由に働ける可能性が生まれたのだから、いいではないかというかもしれない。

 しかし名目上の個人事業主には、被雇用者のようにビジネスに関して個人で判断する自由な権利がない上に、社会保険の負担はすべて自己負担しなければらない。また個人事業主という立場で、とても不安定な立場に置かれている。

 プラットフォームビジネスはこうして、一種のコスト削減モデルになっている。社会の連帯性や利益の分配という理念はまったくなく、ネオリベラリズムピュアのビジネスモデルだといってもいい。

 ドイツでは、プラットフォームの下で個人事業主となっている労働者を保護するため、労働組合がプラットフォームに対して、ドイツの法規にしたがって労働協約を締結するよう要求している。

 これは、日本でいえば個人事業主のための労組を結成することに相当する。

 それに対し、プラットフォーム側はドイツ国内にある事業所を国外に移転させてドイツの法規は適用できないと抵抗したり、ドイツから事業撤退したりしている。

 ネオリベラリズムの原則は、経済成長すれば、それが労働者にも還元され、社会全体が豊かになるというもの。しかし実態は、格差が拡大して中流層が大幅に縮小し、働いて得た賃金だけでは生活できない市民が増えている。

 プラットフォームは、消費者が物やサービスを買ってくれて成り立っている。消費者が貧困にあえいでは、何も買えなくなる。それでは、プラットフォームビジネス自体も縮小してしまう。

 労働者は、プラットフォームにとって消費者でもある。プラットフォームは、利益を追求するばかりでなく、労働者を保護し、利益を分配することも考えなければならない。

(2019年10月10日、まさお)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.