直列型社会から並列型社会へ

 ぼくは、資本主義の基盤は石油や石炭などの化石燃料にあると思っている。化石燃料を持っていれば、それが資本の源になるからだ。化石燃料は多量なエネルギー源となり、大規模施設によって多量なエネルギーを生み出してきた。エネルギーが必要になればなるほど、化石燃料もそれだけ多く必要になる。

 その結果、化石燃料による資本は常に同じ方法に流れ、化石燃料があれば、それだけ資本が増え、豊かになる。そうして、エネルギー集中型の社会が形成されてきた。

 そのシステムが、今の豊かさを生み出してきたのは間違いない。でも、この社会はもろい。

 それは、社会が巨大な利益を生むエネルギーを基盤にして、画一的な社会になっているからだ。それは、原発事故を見てもわかると思う。巨大なエネルギーを生む原発で事故が起こると、たいへんな被害が起こるばかりでなく、たくさんのことが機能しなくなる。

 それは、社会が直列につながっているからでもある。直列型社会ではどこかで問題が起こると、機能不全となる。思考回路も価値観も、社会構造に応じて直列で、画一的になる。

 それでは、社会は持続可能ではない。

 それに対して、太陽光や風などの再生可能エネルギーをエネルギー源として利用すると、エネルギー源は多様になる。エネルギー源は無限にあり、エネルギーをどれだけ使おうが、燃料が必要ないので、コストは増えない。それが、前回書いた限界費用ゼロということだ。

 太陽光や風力などの再エネは、誰にでもどこでも使える。大型のメガソーラーや大型の風車だけが、必要なわけではない。住宅の屋根の上に、ソーラーパネルや小型の風車があってもいい。その結果、誰にでも発電できるようになる。再エネによる発電施設は小さいので、どこかで事故があっても被害は小さい。社会生活にも大きな影響をもたらさない。

 再エネの普及とともに、エネルギー供給が分散され、社会構造が並列になる。それとともに、社会はより持続可能となる。持続可能な社会造りには、再エネは必要不可欠だ。

 でもそういうと、再エネの利用で分散化されるといいながら、自動車では電気自動車だけに集中し、画一化されようとしているではないかと批判されるかもしれない。

 交通においては、自家用車が電気自動車に、トラックなど大型車が水素を燃料とする燃料電池車になる可能性が高い。さらに飛行機や船の燃料は、生物資源を原料として製造される液体燃料となる可能性も高い。交通においても、こうして分割されると思う。

 自家用車においても、水素や生物資源を燃料として使うことができる。でも自家用車では、充電ステーションや燃料スタンドなどのインフラが必要になり、それぞれに対してインフラを整備しなければならない。となると、それだけコスト高となる。このインフラの問題を考えると、自家用車においてまず電気自動車を優先させるのは、間違ってはいないと思う。

 むしろ、いろいろな可能性を探りながら、利便性や効率などを考え、自家用車は電気自動車に選択したといったほうがいいとも思う。でもこれからの持続可能な社会造りにおいては、たとえ自家用車が電気自動車に集中しても、燃料電池車などその他の方法をオプションとして確保しておくことも必要だ。そのほうがリスクが小さい。

 再エネを利用するのは、絶対にこうでなければならないという画一的な方法はない。それぞれ地元の条件に応じて、地元にある資源を有効に、効率よく利用することを考える。自分のところはこれ、あそこはあれと、いろいろな利用方法が生まれたほうがいい。それとともに、再エネへの転換に関していろいろなステークホルダーが生まれる。

 たとえば、これまでゴミとして処分されていた生ゴミが、エネルギー源となる。都会では、生ゴミは家庭から排出される。地方では、家畜の糞など農業ゴミがエネルギー源となる。その他にもぼくたちの生活には、エネルギー源となるものがまだたくさんあるはずだ。それぞれが新しい可能性を見つけ、その利用方法を考える。それが、再エネを利用する基本でもある。

横断幕にあるドイツ語の「UNTEILBAR」とは、「分けられない、不可分の」という意味。LGBTや少数民族などを排除せず、社会の多様性が必要だとする主張する時に使われる。社会の多様性を求めるベルリンでのデモで撮影

 それが社会に多様性をもたらし、多様な価値観も生む。考え方も多様となる。利益も縦に流れるのではなく、横に流れるようになる。それは、利益が分配されるということでもある。社会はこうして、再エネとともに多様化し、持続可能になる。

 社会には、いろいろな問題が発生して当然だ。画一的な社会に比べると、社会が分散され、多様化されていると、社会はそれぞれの問題に柔軟に対応しやすい。多様性は、社会に耐久性をもたらしてくれるといってもいい。そうして、強い並列的社会が生まれる。

 並列的社会では、それぞれの社会を横につなげるためのネットワーク化が必要となる。単にインフラやマンパワーを連結するのではなく、多様な価値観も横につながるようにする。そうして、お互いの価値観を尊重し、共同で持続可能な社会を造ることを考える。インターネットなどのIT技術は本来、並列型社会の横のつながりを強化するために利用されるべきだ。これまでのようにインターネットを利用して、縦型に巨大企業が生まれるようであってはならない。

 社会はこうしたほうが、より持続可能となる。

(2021年7月01日、まさお)

関連記事:
森と社会と多様性
王道はない

関連サイト:
持続可能な開発目標とは(国連開発計画(UNDP)駐日代表事務局)

この記事をシェア、ブックマークする