ハナコとタロウ
もらってしまおうか、どうしようかと、半信半疑でアンネッテとトーマスのところに、子ネコたちを見にいった。でも、行けばもらってくるのはわかっていた。念のため、餌も用意してあった。
行く前から、もらってきてしまったら、ネコの名前はどうしようかという話も、すでに三枝子としていた。
実際にもらってきてしまったからには、ネコたちに名前が必要だ。早速、ネコの名前を決めなければならない。
ぼくは前から、メスネコなら絶対「クンドリー」と決めていた。しかし、三枝子は絶対にいやだという。
クンドリーは、ヴァグナー(ワーグナー)のオペラ「パルジファル」に出てくる魔女的な野性の女。ぼくはとても魅力を感じているが、三枝子は「もっと簡単な名前にして」という。
すると、思ってもいなかったが、すぐに「ハナコ」という名前が思い浮かんだ。それなら、オペラ「パルジファル」でパルジファルを誘惑しようとする「Blumenmädchen」だと思った。日本語にすれば、花の乙女たちとか、花の娘たちという意味。「ハナコ」でいいではないか。
三枝子も、それならと同意してくれた。
さて、次はオスネコだ。
ぼくは、オスネコの名前についてはそれほど考えていなかった。でも咄嗟に「ヴォータン」がいいなと思った。三枝子の希望するように、簡単でいいやすい。
でも、これにもダメだしをくらった。
ヴォータンは、北欧神話の戦争と死の神のドイツ語の読み。ヴァグナー(ワーグナー)のオペラ「ニーベルンゲンの指輪」の主神だ。これではちょっと荷が重くて、名前負けしそうだが、いいやすくていいではないかと思った。
三枝子は、ヴァグナーのオペラからはもう止めてという。
メスネコは「ハナコ」ととても簡単な日本語名なので、オスネコも日本語名で簡単なものがいいではないかということになった。
それで思いついたのが、「タロウ」。
漢字にすると、「太郎」だ。「丈夫な男の子」とでもいう意味。それを敢えてドイツ語にすると、「Robuster Kerl」だ。ああそれなら、「ジークフリート」(ニーベルンゲンの指輪)だと思ったのは、ぼくの勝手なこじつけ。
でもこれで、二件落着。二人の意見は、めでたく一致した。
こうして人間の勝手から、わが家の新しい家族は、ハナコとタロウとなった。
2019年5月20日、まさお
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