いよいよ診察
いよいよ目医者の診察を受ける日がきた。
ぼくは、まな板の鯉の気分。なってしまった病気から逃れることはできない。とくにかく、まず目がどうなっているのか知る必要があると思った。
ぼくの症状は、中心部が歪んて見えるのだった。そこまでは自覚できた。それが、実際にどうしてそうなっているのかがわからなかった。眼底はどうなっているのか。それを知りたい。
見え方チェックシートという背景が黒で、白抜きになった格子状の線のシートファイルをダウンロードしてノートブックに入れ、自分で目をチェックしていた。それで、中心の線が歪んで見えるのがわかっていた。
でも、視力が落ちているという自覚はそれほどなかった。暗い場所でよく見えないなあ、というくらいにしか思っていなかった。
ところが、目医者で視力検査をして愕然とした。
おかしくなった左目の視力は、0.1にもならない。ほとんどが歪んで見えて、識別できない。左目の視力がこんなに落ちているとは、想像もしていなかった。単に景色を見るなら問題はない。でも、左目だけでは文字は何も判別できない。
ぼくにとって、左目が利き目だった。
これで、ジャーナリストして仕事を続けていけるのか。そう思うと、不安だった。
視力検査以外は、はじめて受ける検査ばかり。看護師さんのいう通りにするしかなかった。眼底を検査しているのだろうとはわかった。だが、それが具体的に何を検査しているのか、よくわからなかった。
後で、医師から光干渉断層計という検査で網膜の断面を撮影した写真のコピーをもらった。それで、自分の目の眼底がどう変形したのか、自分でもよくわかった。
網膜の上に膨らみができて、眼底の中心が変形している。これでは、文字を判別できなくて当然だ。
一旦診察室で医師の説明を聞いた。次に、別室で静脈から造影剤を入れて造影検査をするという。
その準備に少し時間がかかる。その間、何人もの患者が医師のいる診察室に入っていった。
モニターの画面に黄色くなった目の画像が映し出されていた。造影剤の影響で、黄色くなっているのだろう。でも素人のぼくには、どこがどうなって変形しているのか、よくわからない。説明されても、多分あの辺が変なのかくらいしか、自分では想像できなかった。
医師の診察結果は、一種の黄斑変性症というものだった。加齢性ではないという。まだ出血もしていない。ただ、遺伝性ではないかという。だから、今問題ない右目にも、同じ症状が起こる可能性があるという。
注射やレーザーによって治療することも可能だ。だがそれによって、視力が回復するわけではない。だから、まずは様子をみようということだった。
ぼくは、ホッとした。元々治療してもらう氣はなかった。様子を見るという医師の診断は、とても信用できた。特に、注射やレーザーで治療しても視力は回復しないとはっきりいってくれたことが、医師を信頼するポイントになった。
ただ、様子を見るだけでいいのか。食事療法など注意するものがあるのではないか。ぼくは、「それでは、どうすればいいのか。食事などにも気をつけたほうがいいのか」と聞いた。
すると医師は、「あなたは日本人なので、健康な食事をしているだろう。それで十分だ。健康のためになることをすればいい。でも、見え方チェックシートでいつも目をチェックしなさい。ちょっとでも悪くなったと思ったら、すぐにきなさい」といわれた。
何だその程度かと、ちょっと肩透かしのような氣もした。でも、内心はホッとした。
でも「遺伝性だろう」といわれたのには、とても引っかかった。親族にそんな話は聞いたことがない。
日本の実家にいる母に聞いてみるしかないと思った。
2019年6月03日、まさお
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