タロウのハゲ
タロウの骨折は、大した問題ではなかった。痛みも次第になくなってそのまま治癒していった。歩き方も、ほとんど問題ない。
タロウの本当の苦悩は、2016年秋から起こる。タロウが2歳を少しすぎたくらいからだ。
首の辺りに、毛が抜けて親指の頭くらいのハゲが一つあるのを見つけた。この時はまだ、猫にとってハゲがこんなにたいへんなものだとは知らなかった。これまで、体験したことがなかった。
タロウはハゲをかいたり、なめたりする。それで、ハゲが余計大きくなる。炎症を起こして、皮膚の表面がベタベタしてくる。
最初は、注射や薬で簡単に治るのかと思って獣医のところにいった。
ところが、かかりつけの獣医は休暇中だった。休暇代理の獣医がいた。代理獣医は、とりあえず抗生物質を注射しておくという。それ以上、ひどくならないようにするためだ。かかりつけの獣医がきたら、原因を調べてもらうといった。
いつもの獣医がいないのだから仕方ないかと思った。でも、抗生物質の効果は長く続かないのはわかっている。原因を突き止めて、根本的に治さない限り、薬漬けになる。
抗生物質は2回注射した。その間、なめたり、かいたりしなくなった。当然だ。これは、治ったのではない。薬で、症状を抑えただけだ。
その間、ネットで調べてみた。
猫のハゲの原因には、カビ、ストレス、ノミなどいろいろ考えられるという。
ノミがいるかどうかは、簡単にわかる。タロウを水の入っていないバスタブにおいて、手で毛をもみくしゃにかき回す。それで、バスタブにノミが落ちていないか見ればいい。ノミらしいものはいなかった。
抗生物質の注射は、できるならさせたくない。でも注射をしないと、ハゲは大きくなってひどくなるばかりだった。ひどい時は、首の片側一面がハゲになって、皮膚の表面がただれはじめた。表面がただれるのは、なめるから。そこをさらにかいたりすると、血が出たりした。
かかりつけの獣医が戻ってきても、手の打ちようがなかった。
なめたり、かいたりしないようにするため、ハンカチを首に巻いた。でも、一部はまだ舐めたり、掻いたりすることができる。
傷口をなめないように、犬猫では円錐型のエリザベスカラーを首にまくこともある。でも、タロウの場合はできなかった。エリザベスカラーはプラスチック製で、首に巻くと、その元が首のハゲをこすってしまうからだ。
どうすればいいのか。お手上げだった。
ハゲは少し経つと、短い毛が生えはじめる。それは、そこが治る兆しだった。でもすぐに、別の場所にハゲができた。
ハゲは、ほとんど消えなかった。
2020年3月09日、まさお
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