街角で偶然入ったカフェがいいな

 ぼくは墓地を散歩するのが好きだ。墓石から、歴史や世の中の流れなどいろいろなことがわかってくるからだ。

 先日、連れ合いと一緒に墓地を散歩した後、カフェに入ってお茶でもするかとなった。まず思いついたのが、墓地の近くにあるベルクマン通りにある「バルコミ(Barcomi)」。すでに何回も入ったことがある。ケーキは自家製でおいしい。わが家には、バルコミのレシビ本もある。コーヒーは自家焙煎だ。

 ただ人気のあるカフェなので、いつも一杯。空席があるかどうかが問題だ。

 案の定、満席だった。そのすぐ横に、「ブレークアウト・カフェ(Breakout Café)」というカフェがあるのを見つけた。それまで知らなかった。外観は何の特徴もない。カフェというよりは、売店という感じ。

 お店の横から中庭が見える。そののんびりした雰囲気に誘われた。店は小さいのに、中庭はゆったりとしている。中庭はカフェというより、憩いの場という感じだった。それが、ぼくの関心を引いた。

 中庭のテーブルに座った。そのうちに、セルフサービスだとわかる。注文するため店内に入ると、目の前の壁に「ソーシャル非営利カフェ」と、大きく書かれている。びっくりした。店員の対応がとても親切なのも気に入った。

 ケーキを一つ買って、連れ合いと一緒に食べる。それがまた、おいしい。自家製と見られる。バルコミのケーキ以上に、品がある。ぼくはコーヒーを飲まないので、注文するのはエスプレッソ。そのエスプレッソを一口飲んで、「うーん」とうなった。コーヒー豆の香りが、口の中に広がる。「おいしい!」自家焙煎だろう。こちらは、バルコミより数段上だ。

 そのくせ、値段は高くない。まったく普通だった。

 ぼくは中庭に座りながら、中庭の様子を観察していた。ここは、単なるカフェではないことがわかる。カフェでお茶をするのではなく、お茶しながら、人々が対話する場だ。中庭の外壁の一部は、街の一角を想像するかのようなデザイン。

 街角で、友だちや隣人と会って話をする場。帰りに、中庭に入る通路にオブジェがあるのがわかった。それをしっかり見ると、カフェが隣人同士の出会いの場、対話の場となっていることがわかった。

 そればかりではい。中庭の奥には、スポーツクライミングを楽しむ人工壁もあった。

 こどもの遊び声が聞こえるのに、子どもの姿が見えない。おかしいなと思ったら、中庭から下がったところに、子どもの遊ぶ部屋があった。子どもたちはそこで、遊んでいたのだ。だから声だけ聞こえて、見えなかったのだ。部屋の前には、若者や大人用の遊び器具も置いてある。

 後でわかったのだが、カフェは教会系団体の一角にある。障害者や難民などの職業訓練の場としても、使われているという。

 カフェは、地元社会において人の輪や連帯性、共生を促進するための一つのプロジェクトして運営されている。公的補助も受けてきたという。

 出会いと対話のためのカフェ。そのアイディアは、行政側が考え出したものではない。市民が提案した。こうした市民のイニシアチブが、行政側に受け入れられる。行政にそれだけの受け皿があり、それを積極的に取り入れて街つくりをする。

 住民参加による街つくりといってもいい。こんなカフェが、街のあちらこちらにあったらと思う。

 ブレイクアウト・カフェは、ベルクマン通りの市場の向かいにある。

2022年8月15日、まさお

関連記事:
ケーキとトルテ

関連サイト:
Breakout Caféのサイト(ドイツ語)
Breakout Caféのフェイスブック(ドイツ語)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.