代理人が必要

自分らしく死ぬために

 人間、誰でもぽっくりと急死するのが一番いいと思っている人も多いと思う。そうすれば、色々面倒を見てもらう必要もない。

 ただ死んでしまうと、自分ではもう何もできない。誰かに後始末をしてもらわなければならない。

 死ぬ前に認知症になってしまったり、脳梗塞で自分の意志を伝えることができなくなったり、自分で判断できなくなることもある。まだ頭がはっきりしていても、高齢でいろいろな手続きができないこともある。

 ぼくは自分らしく死ぬためには、自分に代わって判断するほか、死後の後始末を任せることのできる代理人が絶対に必要だと思っている。

 いや、自分には家族がいるからその必要はない。そう思う人も多いと思う。

 しかしぼくは、家族がいても連れ合いや自分のこどもを代理人として決めておくべきだと思っている。たとえ夫婦同士であっても、お互いに代理人として指名してあったほうがいい。

 家族がいる、いないに関わらず、代理人を指名しておいたほうが、いろいろな手続きがスムーズに進み、自分の意志通りに実行してもらいやすい。それが、自分らしく死ぬ一番の基盤だと思う。

 国外で死ぬ場合、家族が自分の住んでいるところにいない場合もある。その場合は、家族以外の人に代理人になってもらったほうが家族の負担が軽くなる。 

 代理人には委任状が必要になるが、委任状の問題は後回しにする。まず「代理人」とは何かを、はっきりさせておく必要がある。

 「代理人」は、全権を委任する人とすべきで(ドイツ語で「Bevollmächtigte(r)」)、死後も自分の代理人であることをはっきりさせておく必要がある。

 ただし注意しておきたいのは、死後、死亡日をもって故人の財産はすべて相続人のものになる。そのため、死後に代理人が支払いなどでお金を扱う場合には、注意しなければならない問題もある。これについても、後で説明したい。

 ここで注意しなければならないのは、代理人は、認知症になったり、脳梗塞による脳障害で自分で判断するのに不安や心配のある人を支援するため、ドイツで法的につけることが義務付けられている「成年後見人(gesetzliche Betreuung)」ではないことだ。

 そうした場合、全権を委任された代理人は、第三者を成年後見人に指名することも、自分が成年後見人になることもできる。ただしその権限は通常、委任状にはっきりと書いておく。

 ドイツの成年後見制度では、成年後見人が患者の家族と代理人よりも権限があることを知っておいてほしい。家族と代理人は、成年後見人の決断にしたがうことになる。

 それに対して代理人は、委任者の意志に沿って全権を委任されるので、委任者が代理人に特にしてもらいたいことを委任状に具体的に書いておくこともできる。

 高齢になると、銀行振込や現金の引き出しなども面倒になる。それを代理人に委託するには、代理人に対する全権委任状の他に、口座のある銀行で代理人に対して別途銀行手続きの委任状を出しておく必要がある。

 この場合、代理人が死後も口座から支払いなどができるように、銀行用の委任状が死後も有効であることが特別に記載されていなければならない(ドイツ語では、「über den Tod hinaus」という表現が必要)。

 この銀行用の委任状は、家族が代理人となる場合もつくっておいたほうがいい。

 ぼくは、代理人を指名する場合、一般の委任状と銀行の委任状をセットとして考えるべきだと思っている。そのほうが、代理人の仕事がスムーズに進むと思う。

 以下で、一般の委任状と銀行の委任状を持っている場合に、代理人が行なえることを簡単にまとめておく。

+生前:
各種手続き、銀行口座からの支払い、現金引き出し、病気の時の付き添い、病院や介護施設の決定と交渉など

+死後:
各種手続きと届出、葬儀屋との契約、葬儀、墓地との契約(埋葬も含め)、各種保険の解約、住居賃貸契約の解約、その他契約の解約、銀行口座からの支払い、現金引き出し、銀行口座の解約、住宅の処分など

2023年9月19日、まさお

関連記事:
国外で自分らしく死ぬために
「人間の問題」という意識
公共フェリーは老人の極楽だ

関連サイト:
DeJaK デーヤック友の会

この記事をシェア、ブックマークする