自分の持ち物はどれくらい価値があるか？
自分らしく死ぬために
前回、死んだ時どれくらいの費用がかかるかについて書いた。それに引き続き、自分の持っている物（遺産）を処分してもらう時、何か売れるものがあるかどうか、売れるとするとどれくらい価値があるかも気になる。
正直いうと、これについては期待しても二束三文にしかならず、代理人に売る努力をしてもらう時間と労力を考えると、取り越し苦労になってしまう可能性が高いことを覚悟しておいてほしい。
もちろん、マイセンの磁器など高級食器や銀製の食器類、あるいはダイヤモンドなどの高級宝石を持っていれば別だ。そういう高級品は売りやすい。オークションにかけることもできる。生前は貧乏生活をしていたので、死後何もないと思って処分していたら、金が出てきた例もあった。しかしそういうケースは、まったくの例外だと思う。
著名な作家の絵画なども売りやすいと思う。ただオリジナルかどうか、鑑定が必要になると、それにもお金がかかる。オリジナルだという証明がないと、オークションにもかけれない。
こうした高級で売れるものは、相続の対象になるので、その点も注意が必要だ。
一般に思われているほど価値がないのは本だ。本は、とても古い貴重な書籍でない限り、お金にはならない。本は、単に古本屋に引き取ってもらうのでさえ苦労する。処分業者からは、本は申し訳ないけど、そのまま捨てるしかないといわれる。
自分で貴重な日本語の全集と思っていても、ドイツの古本屋には興味がないし、日本関係の機関に引き取ってもらえないかと問い合わせても、関心を示してくれない。
そのため蔵書の多い人には、生前中に自分で本を処分しておくことを勧めている。ぼくは自分でももうすでに、定期的に数冊づつ本を捨てるはじめている。
家電製品と家具は、写真を撮ってネット上でプロバイダー経由で買い手や引き取り手を探しても、古くなった時代遅れの家電や家具は、買い手はもちろん、引き取り手さえもなかなか見つからない。賃貸アパートの場合、遺産を処分して返さないといけないので、そう時間をかけているわけにもいかない。ぼくは代理人として、ネットで探すのはだいたい途中で諦めてきた。友人や知人を通して引き取り手を探すのが、一番効率がよかったと思う。
効率がよかったのは、故人の友人に形見分けするのと、ガレージセールのようにして故人のアパートに自由に入ってもらって、残っている物を引き取ってもらうことだった。ガレージセールの場合はよく、気持ちだけでいいのでちゃんとした具体的な福祉目的を明示して、チャリティーとしてカンパしてもらったりした。
パソコンやスマホなどの端末機も、以外と難しい。もう何年も使った古い機種では、使い物にならない場合が多いからだ。ほしいといわれて差し上げても後になってから、古くてそれなりの新しいOSが載らないとか、反応が遅すぎて使い物にならないといわれることが多かった。
和服は人気があるが、それもあまりお金にはならない。余程高級な和服と帯なら別だが、普通に日本から持ってきた和服はそうは売れない。切手やコインなどの収集家もいると思うが、それも余程貴重で高価な物でない限り、買い取ってくれない。それは、メガネやカバン、靴などのブランド品も同じだった。
家族が自宅に残った故人所持品を時間をかけて処分できるなら別だが、代理人が数か月の間にすべてを処分するには限界がある。その点で、故人が残していったものをそれなりのお金にするのは、かなりの高級品でない限り、無理な話だと思っておいてもらいたい。
故人が残していったものは、故人の人生を示す貴重なものだ。特に故人の家族であれば、残しておきたいものもあると思う。しかしドイツで一人で暮らしていて亡くなった場合は、日本の親族には故人の持ち物にそれほど関心がわるわけでもない。日本の親族にはそのために時間とお金をかけて、日本に送ってもらってお金にすることなどは期待できないと思っておいてもらいたい。
自分が残していく物は、それほど価値のある物ではないと思っておくのが一番。高級な物であっても、自分がもらってほしいと思う友人などに形見としてもらってもらうほうが、ぼくはより価値があると思う。
生前中に自分で持ち物を整理して、誰に何をもらってもらうのかなどその旨を書いて残しておき、そのメモを代理人に渡しておきたい。
後は、代理人に一任するべきだ。
2024年4月29日、まさお
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