ポツダムのバルベリーニ美術館で印象派の画家ピサロ展

 ポツダムのバルベリーニ美術館で2025年6月14日、印象派の画家カミーユ・ピサロ展がはじまった。

 ポツダムのバルベリーニ美術館は、ドイツのソフトウエアメーカーSAPの共同創立者ハッソー・プラトナーさんが創立した。プラトナーさんの絵画コレクションをベースにして、印象派などの作品の展示会が開催されている。

 今回のピサロ展も、プラトナーさんが収集した7つの作品のほか、50カ所からピサロの作品を借りて、米国デンバー美術館と共同で展示会を実現した。

 今回運よく、展示会のオープンする前に美術館でピサロの作品を見る機会を得た。展示会会場はまだ準備中。梱包から出したばかりで、壁の定位置にまだかけられていない作品もあった。

作品を梱包から出した後、損傷がないか慎重にチェックする職員

 ピサロの原画を見るのははじめて。すぐに、モネなど他のフランス印象派画家とはちょっと違うなと感じる。点描もあるが、それは農家や農地の景色などに見られる。印象派的ではない線がはっきりしている作品も多い。産業革命で産業化の進む工場の景色を描いた作品、都市に集まるたくさんの人を描いた作品など、モチーフは自然を描きながらも、単なる自然だけではない。

 それが、ピサロが他の印象派の画家とは異なる特徴なのか。

 しかし、それがピサロの根本的な特徴ではないと感じる。ぼくがピサロの作品を見て歩くうちに「アレッ」と気づいたのは、作品の焦点(フォーカス)が他の画家の作品と違っているのではないかということ。

 西洋画と日本画の間で根本的に違うのは、西洋画では絵の焦点が一つで、それが遠近描写の基盤になっている。それに対して、日本画では一つの作品の中に焦点がいくつもある。その焦点ごとに描写が一つにまとめられている。作品で一つにまとまった遠近描写はない。

 ピサロの絵も、焦点は一つだ。しかし、絵が収束する焦点は点ではない。絵全体とでもいおうか。これは、スマートフォンの内蔵カメラで撮影した写真に似ている。焦点があるようで、ないようにも感じ、写真全体が焦点になっているように感じるのに似ている。

 ピサロは19世紀後半から20世紀初期の画家でありながら、目の前に見える風景を現代のスマホのカメラのように捉えているのがわかる。遠近の描写もスマホで撮った写真のようなのだ。ピサロの目が、スマホのカメラの目のように見ていたともいえる。

 ピサロの作品はとてもモダンで、新鮮なおもむきがある。

 ポツダムでのピサロ展は、2025年9月28日までの予定。

2025年6月17日、まさお

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関連サイト:
ポツダム・バルベリーニ美術館のサイト(英語)

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