外国人労働者が増えてよかった!
ぼくがまだ日本向けにテレビニュースの仕事をしていた時、ドイツでの取材のためにテレビの取材クルーがパリやロンドンの支局からくることがあった。その時、ドイツのお店で同僚のために水などを買って戻ってくると、「何したんですか。店員に怒られていたでしょう」とよく聞かれた。
最初はよくわからなかったが、すぐに気づいた。ドイツ人の店員の声が荒いので、ぼくが怒られていたと思ったのだった。「ドイツでは、これが普通ですよ」と、ぼくは笑いながら答えていた。
ぼくは、お客に対する対応はベルリンが最悪かと思っていた。だが同僚たちは、ドイツ中どこに行こうが、いつも同じ質問を繰り返した。
お客が神様のように扱われる日本にくらべ、ドイツではどちらがお客なのかわからないくらいにお客に対する対応が悪い。お客の方が店員をヨイショしておだてないと、うまくいかないことも多い。ドイツでは、お客を相手にするサービス業がまったくなっていないということでもある。
まあ、それがドイツなのだ。
ぼくは、ドイツのサービスの悪さに長年慣れている。ドイツのサービス業はこんなものかと諦めている。ところが、ドイツのサービスがここ数年来、変わってきているのだ。
それは、外国人の店員が増えてきたからだ。ぼくはスーパーのレジに並ぶ時、まず外国人がレジに座っていないかと探す。外国人がいるとホッとして、そのレジに並ぶ。外国人がいない場合は、男性の座るレジに並ぶ。そのほうが、客にやさしいからだ。
先日、ドイツ人の隣人の女性がわが家に遊びにきた。その時偶然、スーパーのレジの話になった。ぼくができるだけ外国人が座っているレジにいくようにしているといったら、「わたしもそうよ」という。
女性は1年の半分をスペインで暮らしている。ドイツに戻ってくると、ドイツのサービスの悪さにうんざりするのだという。グロテスクだとさえいった。ドイツ人でさえも、そうなのかと思った。
レジに座る外国人が増え、本当に助かったと思う。お客がお客として、やさしく、人間らしく対応してもらえるようになった。セルフレジのあるところでは、セルフレジを優先するという友人も多い。ぼくもそうだ。そのほうが、レジにいって嫌な思いをするよりいい。

ドイツ人の名誉のためにいっておくが、どのお店でもサービスが悪いわけではない。お客に対する店員の対応がいつもいいなあと感心するのが、オーガニック食品スーパーだ。ドイツでは、オーガニック食品専門のスーパーがいくつもある。店員はほとんどドイツ人だが、どのお店でもお客に対してとても親切だ。ドラグストアにも一つお客への対応のいいチェーン店がある。そのドラグストアは、ルドルフ・シュタイナーの神秘学・人智学を基盤にするシュタイナー教育で社員教育している。
外国人労働者が増えてよかったと思うのは、スーパーなどサービス業だけではない。介護サービスもそうだ。ぼくの友人は重度障害者施設に入っているが、今入居している施設は新しく、介護師のほとんどが外国人だ。それまではドイツ人介護師が障害者を物のように非人間的に扱い、訪問者にもきつく当たるので、何というところだと思っていた。それに対し外国人介護師は誰にもとてもやさしく、親身に対応してくれる。その度によかったとホッとしている。
ドイツ人がお客に対してやさしくないのは、ドイツ人気質の問題ではない。企業体質と企業による社員教育の問題、働く側のモチベーションの問題であると思う。サービス業において効率や利益だけを求めすぎ、顧客サービスはどうあるべきかという企業哲学がないからではないかと感じている。
レジで働く人たちは決済したお客の数でしか見られない。しかしレジエリアにおいて、お客の流れを効率よくする工夫がされているとは思えない。その分、レジで働く従業員ばかりにプレッシャーがかかる。
働く側はそのプレッシャーにうんざりしているのだと思う。オーガニック食品スーパーのようにオーガニック食品を普及させたいというモチベーションがあれば、お客にやさしく対応ができる。しかしそれができないのは、働く側にモティベーションを持たせることのできない企業側の問題でもある。
しかしドイツ企業は、そこまで考えているだろうか。ぼくは40年以上ドイツで暮らしているが、そこまで考えてあるなあと感じたのはごく稀だ。
同時に社会において自己中心的すぎて、人への思いやりや人との接し方はどうあるべきかなど、社会教育がこどもの時からしっかり行われていないからでもあると思う。
外国人労働者が増えることで、ドイツ社会が変わってくれることを期待したい。
2026年3月10日、まさお