原子力発電が温暖化対策になるという誤解

 現在、若者たちが毎週金曜日に、Fridays for Futureという抗議活動で早く地球温暖化対策を講じるよう求めています。

 5月後半に行われた欧州議会選挙においても、ドイツでは地球温暖化の問題が有権者の最大関心テーマとなっていました。

 ドイツの欧州議会選挙では、環境問題に真剣に取り組む緑の党が大躍進しています。選挙において、緑の党は若い有権者の票を獲得し、18歳から60歳未満までの投票者においては第1党となりました。

 脱原発を決めたドイツにおいてはその後、保守政治家を中心に温暖化対策として原子力発電への復帰が主張されだしました。復帰といっても、2010年にメルケル首相がそうしたように、脱原発の時期を延期しようというものです。

 それは、原子力発電が二酸化炭素など温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しないからです。

 再生可能エネルギーへのエネルギー転換を進めるプロセスにおいて、原子力発電にも比重をおいてエネルギーミックス政策を進めていくべきだという考えです。

 それに対して反原発団体は、ほら見たことかといいます。これまでも警告したではないか。脱原発は、まだ確定していないのだと。いつまた原子力発電に戻るかわからない。だから、反原発運動をもっと強化していかなければならないと主張します。

 日本のエネルギー政策は、まさしくドイツの保守派が主張するのと同じ論理です。原子力発電は温室効果ガスを排出しないので、温暖化対策において重要だというものです。

 でもぼくは、いずれの意見にも同意できません。

 これまでベルリン@対話工房のサイトで何回か書いてきましたが、再生可能エネルギーの割合が増えるにしたがい、原子力発電と再生可能エネルギーは両立できなくなります。

 これが、一番のポイントです。再生可能エネルギーの割合が増えると、原子力発電にはもう後戻りできません。

 その根拠は、本サイトの「再エネいろは」(温暖化対策のために原子力発電が必要だといわれるが?)で詳しく説明することにします。

 簡単にいえば、再生可能エネルギーは変動が大きいので、原子力発電のように発電量が常に一定の発電方法とミックスすると、電力供給システムがうまく機能しなくなります。

 その結果、送電網が不安定になり、発電がコスト高になります。

 日本で太陽光発電の出力抑制が行われ出したのは、まさしくその兆候です。

 再生可能エネルギーによる発電では、発電量に大きな変動があります。その変動のあるものには、変動のあるもので柔軟に対応するしかありません。一定で柔軟性のない原子力発電では、その変動に対応できません。

 日本政府が本当に再生可能エネルギーを増やしたいのであれば、原子力発電を縮小していくしかありません。

 温暖化対策として原子力発電をベースロード電源として重要視しながらも、再生可能エネルギーも増やして、エネルギーミックスを実現するとする日本政府の政策は、その意味で矛盾しています。

 まず、原子力発電を増やしても温暖化対策にはなりません。原発を新設するのに10年から20年もかかります。その間、温暖化は待ってくれません。それでは、長い時間と莫大な資金を使って、原発を新設する意味がありません。

 再生可能エネルギーの発電施設のほうが、俄然早く、安く設置できます。

 既存の原発をできるだけ長く稼働させても、再生可能エネルギーと両立しなくなるのは、すでに述べました。

 この現実を見ると、わかると思います。原子力発電は、温暖化対策とはなりません。

(2019年6月10日、まさお)

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