日本の温暖化懐疑論への疑問

 さよなら減思力において、日本でホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をウソだと思っている人が以外と多いことについて書きました。

 日本において「温暖化懐疑論」が広がっていることについても、このエネルギーのブログにおいて書いておかなければならないと思います。

 温暖化問題については、米国トランプ大統領が米国の石油産業、石炭産業、特にシェールガスを保護するため、温暖化は人間が引き起こしたものではないと主張しています。それとともに、関連産業を大々的に支援しています。

 ドイツにおいても、極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が難民問題に次ぐテーマとして、温暖化を政治テーマにしました。ドイツでは、2038年までに脱石炭することが政治決定されました。それに伴って職を失う労働者をターゲットとして、勢力拡大をしようと目論んでいるものと見られます。

 ぼくは同時に、現在ドイツで人気を集めている緑の党に対抗するためだとも見ています。今年2019年5月の欧州議会選挙直後の記者会見で、「われわれ(AfD)の最大の敵は、緑の党だ」と発言したガウラント共同党首のことばが、いまだに頭の中に鮮明に残っています。

 温暖化懐疑論の基盤には、化石燃料を使っていこうとする保守的な経済政策があると思います。そのため、右翼系シンクタンクによって情報が発信されているケースが多いと、ぼくは見ています。

 それに対して日本の温暖化懐疑論は、これら右翼の政治戦略的な思惑とは違うものです。

 日本で温暖化懐疑論を主張している論者は、広瀬隆、武田邦彦、槌田敦、青山貞一など、長い間に渡って反原発運動を続けてきた重鎮たちです。そして、その重鎮たちに賛同する親派が日本の反原発運動に広がっています。

 もちろん、温暖化懐疑論は世界中にあります。でも、世界では少数派だといわなければなりません。温暖化懐疑論が反原発運動にしっかり根付いているという特徴は、日本だけの特徴だと思います。

 それが、日本の反原発運動を複雑にし、再エネ促進に向けた内部紛争の種にもなっているようです。

 温暖化懐疑論とは、どういうものなのでしょうか。

 温暖化は人間が引き起こしたものではなく、地球の自然のサイクルの一部として今温暖化期が到来しているとするか、あるいは温暖化を否定します。

 ここでは、温暖化を主張する科学的な検証方法に疑問を呈します。しかし、論者たちがジャーナリストであったり、気候変動とは専門外の科学者たちであることにも注意しておく必要があります。

 ちょっとした科学的な論証ミスでも、大きな問題として科学的な検証全体が間違いであるように主張し、科学に対して不信感を抱かせようとします。ある科学者が温暖化を主張するように買われていたとして、それが温暖化を主張する論者すべてに当てはまるかのようにすることも、その論拠においてとても重要な位置を占めるのが特徴です。

 温暖化懐疑論には、これまでいろいろと科学的な反論がなされてきました。しかしそれは、無視されます。温暖化の問題について違う立場からお互いに議論することも避けます。

 先日も、広瀬隆さんが温暖化問題について議論しようとする温暖化主張派の申し入れを受けなかったと聞いています。

 地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスが大気中に蓄積され、太陽から得た熱エネルギーが地球から放出されなくなることによって起きる現象です。特に、産業革命以降の温暖化が急激なのは、石油や石炭などの化石燃料を燃焼させて二酸化炭素などの温室効果ガスを排出してきたことに起因します。このまま温室効果ガスの排出が続くと、人類に対して大きな影響があると予想されます。

 これが、世界における科学的なコンセンサスです。もちろん、科学に不確定性があるのも事実です。でも、科学的な論拠に基づかずに不確定性があるからすべてをダメだと否定したり、疑問視することは、許されません。

 不確定性があるなら、それをお互いに議論しながら、取り除いていくことこそが、本来あるべき道です。

 ぼくには、どうしてこのように日本だけで温暖化懐疑論が蔓延しているのかよく理解できません。温暖化説を原子力産業の陰謀とするにしても、原子力発電がもう不要になっているのは明らかです。それについては、これまで本サイトでいろいろ書いてきました。

 今、温暖化懐疑論を唱え、拡大させることは、将来の世代に対する冒涜です。いや、自分たちこそ将来の世代のこと、社会について考えているとするなら、正々堂々と温暖化問題について議論する場に出てくるべきです。

 それができないなら、温暖化懐疑論は根拠のないもの、意味のないものとしか思えません。

2019年11月24日、まさお

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