自動車の価値が変わる

 ベルリン@対話工房のサイトで、自動車がステータスシンボルとして魅力を失ってしまうと書きました(「車はステータスシンボルではなくなる」)。若者たちの間では、豪華で、スピードのある車によって優越感を得ようとする時代が終わろうとしているのです。

 車はむしろ、移動という観点から評価されるようになります。移動の快適さのほうが優先されます。

 同時に今、ガソリン車やディーゼル車が電気自動車や燃料電池車に代わろうとしています。

 電気自動車や燃料電池車は、電動機(一般的にはモータともいう)で駆動します。電動機の性能は、出力の大きさだけに違いがあります。電動機のメカ的な性能に大きな差はありません。

 電気自動車と燃料電池車が普及するとともに、自動車のスピードと馬力は、電動機の出力だけの違いとなります。その結果、ガソリン車やディーゼル車のエンジンのようには、性能に違いを感じなくなります。

 車のスピードや馬力に魅力を感じる時代が終わります。

 自動車のデジタル化で、車はむしろ、アプリによるサービスを提供する場に変化します。車がビックデータを収集する手段になります。

 車を販売するのが、車自体から収益を得るのではなく、アプリによるサービスとビックデータの収集によって収益を得る方向に変わるのです。

 これは、自動車がスマホと同じように、デジタル機器の一つにすぎなくなるということです。

 運転操作の自動化が進めば進むほど、車の運転操作も必要なくなります。その時、搭乗者にアプリで何らのサービスを提供する。それが、車の役割になります。車の質は、そのサービスによって評価されます。

 自動車では、自動車のオペレーションシステムの性能と、アプリのサービスの質がたいへん重要になるということです。

 その結果、車を運転する楽しみはなくなり、車を持っている必要はないと感じる人が増えます。

 その意味で、自動車業界はとても大きな転機にきていると思います。

 デジタル産業が躍起になって自動車のソフト開発をしているのは、そういう背景があるからです。この分野では、米国のデジタル産業が俄然強い。米国のデジタル産業が、自動車業界においても世界をリードしてしまう危険があります。

 でもぼくは、自動車業界がそう簡単には米国デジタル産業の独断場にならないのではないかと思っています。それはなぜか。

 次回は、それについて考えます。

2020年2月23日、まさお

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