エネルギー選択宣言ブログ

禁止と負担増政策から頭を切り替える

 ぼくが「エネルギー選択宣言」のタイトルで、記事やブログを書いてきたのは、エネルギーすべてに対してぼくたち市民に選択権があることをはっきりさせるためです。

 たとえば電気では、長い間ぼくたちはエネルギー源を選択できませんでした。原子力発電で発電されていようが、石炭火力発電で発電されていようが、電気は区別されません。電気は電気でした。電気の小売が自由化され、ぼくはちはようやく、原子力発電された電気はほしくない、再生可能エネルギーで発電された電気がいいと、自分で電気を選択できる権利を得たのでした。

 ただそのまま何もしなければ、どのエネルギー源を選択するのかは、環境意識の問や金銭的余裕の問題に依存してしまいます。教育レベルが高く、裕福な人しか、エネルギー源を選択できない可能性があります。

 それでは、エネルギーを自分で選択する人が広がりません。

 それを避けるため、気候変動や環境破壊の原因となるものの利用を禁止します。あるいは、二酸化炭素を排出するものに炭素税を課税するなどして、法的に負担増を課することで利用を抑えます。

 ただこれは、市民にこうしなさいと、法的に決めてしまうことを意味します。それでは、市民に選択権がありません。

 さらに、禁止や負担増政策が社会的かという疑問も発生します。禁止や負担増政策によって、より大きな負担を被るのが低所得者など弱者だからです。社会問題とならないようにするには、弱者の負担を軽減するため、別の還元策を考えなければなりません。

 禁止や負担増に代わる政策が、インセンティブ政策です。たとえば電気自動車を普及させるため、助成金を給付します。ドイツでは現在、ガソリン車やディーゼル車を電気自動車に買い換えると、最高6000ユーロ(80万円弱)の助成金を受給できます。ただこれは自動車の買い替えになるので、政策が低所得者にまで届きません。自動車の台数を減らすことにもなりません。

 このような施策が、これまでの政策だったと思います。

 ところが、ドイツ南西部の小さな町デンツリンゲンが、これまでにないまったく新しい施策をはじめました。デンツリンゲン町の人口は1万3600人。町の建物の屋根には、あちこちにソーラーパネルが設置されています。

 町は2035年までに、カーボンニュートラルを実現することを決議しました。悩みの種は、デンツリンゲンのような地方では、移動する足として自家用車が欠かせないことです。自動車の問題を何とかしないと、カーボンニュートラルは実現できません。

 そこで町では、新しい施策を考えました。自動車を廃車にして、その後3年間自動車を購入しないことを約束すると、周辺の近距離公共交通を利用するための年間チケット630ユーロ(8万円余り)か、電気自転車を購入するための助成金として、500ユーロ(6万円余り)を給付します。

 デンツリンゲン町ではさらに、自家用車を止めてカーシェアリングに切り替えたり、カーゴバイクを購入する時にも助成金を支給するプログラムが用意されています。

 デンツリンゲンのような小さな地方自治体ではじめたことは、大都市でも通用するのでしょうか。

ベルリン市内の公共交通利用年間カード。このカードで、市内中心を走る電車、地下鉄、トラム、バス、フェリーが乗り放題。平日の夜20時以降と週末、祭日は、このカード1枚で、2人まで乗ることができる。カード利用者が無記名なので、家族で交代して使えば共用できる

 ベルリンで交通改革を求める市民グループ、チェンジング・シティーズは、ベルリンでの自動車台数を半減させるべきだと主張し、ベルリンで自家用車を廃車した場合、ベルリンと近郊の公共交通を利用する年間チケット代に相当する1100ユーロ(15万円弱)を給付することを提案しています。

 ぼくは、その財政負担は自動車中心の都市造りから脱皮することでかなり補填できるのではないかと思っています。ただ実際に、どれくらいの人が自家用車から公共交通に乗り換えてくれるのか。予想がつきません。でもチェンジング・シティーズは、そのための年間財政負担は、約10億ユーロ(1000億円余り)になると試算しています。それでは、年間約100万人を助成することになります。ベルリンの人口が400万人にならないので、ぼくにはそれは多すぎるように思います。

 さらに問題は、ベルリン郊外に暮らし、公共交通では通勤できない市民をどうするかです。それに対してぼくは、たとえばカーシャアリングによる相乗り通勤制度を導入して自動車の台数を減らすほか、電気自動車への切り替えによって排ガスを抑制することを考えるべきではないかと思っています。

 いずれせよ、カーボンニュートラルを実現するには、交通においてカーボンニュートラルをどう実現のするのかが、重要な課題になるのは間違いありません。それを促進するためのおもしろいアイディアが、これからどんどん出てくるのを期待したいと思います。

2021年7月04日、まさお

関連記事:
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エネルギー供給を社会化する

関連サイト:
地方自治体デンツリンゲンのサイト(ドイツ語)
チェンジング・シティーズ(ドイツ語)

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