歩行者の青信号が短かすぎる

 ベルリン@対話工房のサイトでは、歩行者にやさしい街つくりについて書いてきました。しかしぼくの暮らしているベルリンの街を歩いていて、ベルリンが歩行者にやさしい街だとは到底思えません。

 それを一番感じるのは、横断歩道を歩いている時です。ベルリンの道路は幅広い。中央分離帯まで行くための信号と、中央分離帯から向こう側に渡るための信号が別々になっています。広い道路を一気に渡るには、走るか駆け足で歩くかないと、2つの信号が青になっている間に向こう側に渡ることができません。中央分離帯で一旦止まり、そこから次の信号が青になるのを待ちます。

 それどころか、信号が青になって数歩歩いただけで、信号がもう赤になってしまう場合も結構あります。その時のんびり歩いていると、信号待ちの車にクラクションを鳴らされることもあります。

ベルリンの歩行者の信号は、ほとんどが「アンペルマン」になった。東ドイツからの遺産だ

 それでは、高齢者や障がい者は横断歩道を渡れないのではないかと思ってしまいます。

 ベルリンには多分、道路を横断することだけを目的とした歩道橋はありません。それでいいのだと思います。日本の横断歩道橋は、高齢者や障がい者、乳母車を押す歩行者などをまったく無視しています。横断歩道橋ではエレベーターをつけるなどして、バリアフリーにするべきです。

 なぜ、歩道の青信号が短く、横断歩道橋まで設置して、歩行者を不自由にするのでしょうか。

歩行者にやさしい街づくりを目指すドイツ南西部ハイルブロン市では、鉄道の線路を横断する歩道橋にエレベータが設置されていた

 それは、街が自動車中心に計画されているからです。歩行者が道路を横断しても、できるだけ交通渋滞が起こらないようにする。それが、これまでの街つくりの基本です。

 でも、街は車のものですか。それとも、そこで暮らす市民のものですか。

 と聞くと、街の経済を動かすには、車の流れをスムーズにしなければならないのだからといわれます。

 これまで経済優先を理由に、街に入る車も規制してきませんでした。その結果、街の大気汚染でぜんそくなどを患う市民が増えます。その費用は、社会の負担になります。納税者負担ということです。結局、市民が負担して泣き寝入りしているにすぎません。

 同時に、車の騒音で街の生活の質は劣化するばかりです。

 これが、これまでの街つくりの実態でした。歩行者ばかりでなく、街に暮らす市民を無視してきました。市民が街から離れていきます。日本の地方都市にいくと、街の中心が活気を失いました。当然の結果だと思います。

 街を自動車から、市民の手に取り戻す必要があります。こういうと、経済を無視していると批判されそうです。でも市民中心の街つくりをすれば、街が活気を取り戻します。同時に、街の経済も活性化されます。

 ぼくは、自動車を街から締め出してしまうべきだとまではいいません。でも最低限、歩行者と車を平等に扱う街づくりをしてほしいと思います。そうでないと、街は持続可能にはなりません。

 これまで長い間、車中心の街つくりをしてきました。それを今から、取り返すのはたいへんなことです。かなり大きな変化が必要です。

2021年9月05日、まさお

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関連サイト:
歩行者にやさしい街つくりをするドイツ南西部ハイルブロン市(ドイツ語)

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