省エネとは何かを考える

 熱供給ではまず、建物全体で省エネしなければならないと書きました。それは、生成された熱(冷房の冷熱も)を建物から逃さないで、エネルギーを効率よく使う必要があるからです。

 地域暖房熱のように地域全体に熱をまとめて供給する場合も、そのための配管は十分に断熱しなければなりません。

住宅の地下の見えないところも、こうやって断熱材をはることで断熱性能を上げる

 これらの措置はすべて、省エネするためです。でもぼくたちはこれまで、省エネというとどう対応してきたでしょうか。

 日本政府や日本の大手電力は、資源を有効に利用するため、省エネしましょうといってきました。そういわれて、電気ストーブを止めて、ガスストーブに代えた人はいませんか。

 省エネする理由に、「資源を有効に利用するため」と謳い文句をつけるのは、グロテスクなごまかしであることは、すでに「省エネというごまかし」に書きました。だからここでは、繰り返して説明しません。

 電気ストーブをガスストーブに代える意味がないのは、気候変動が騒がれている現在、もう説明しなくてもいいと思うのですが、どうですか。天然ガスのほうが二酸化炭素の排出量が少ないからという議論も、もう通用しません。

 ドイツでは、いずれ天然ガス網が不要になるけどどうしようかという議論まではじまっています。天然ガス網がどうして不要になるのかについては、これから順次取り上げていきます。

 日本の家電製品はよく、省エネが優れているといわれます。でも同時に、本来なくてもいい省エネ家電製品を増やしたり、なくてもいい機能をつけてきませんでしたか。そうして、必要ない新しい家電製品をどんどん購入してきませんでしたか。

 それで本当に、省エネになったでしょうか。不要な機能や家電製品がどんどん購買されると、いくら省エネ製品でも省エネにはなりません。

 でもどうして、そういうことがこれまでまかり通ってきたのでしょうか。

 ぼくたちの省エネの視線が、目先にしか向いていなかったからだと思います。電力会社もばかではありません。石炭などの化石燃料をできるだけ長く使ってビジネスを続けなければなりません。そのために、「資源を有効に使って省エネしましょう」といいます。

 それは省エネのためではなく、電力会社を延命させるためだったのです。それでは、何ら省エネにはなりません。二酸化炭素の排出を削減することにもなりません。

 家電メーカはできるだけたくさんの家電製品を買ってもらうため、省エネを売り文句に使います。省エネといえば、消費者も買いやすい。それで実際にどう省エネするかは、消費者の問題だ程度にしか思っていません。

 ぼくたちはこうして、目先の省エネしか考えてきませんでした。

 省エネでは、エネルギー消費の全体において消費を減らすことを考えなければなりません。そうでないと、省エネしたことにはなりません。カーボンニュートラルによって、将来は電気中心の社会になります。そのためには、電気をどう分配して、電気をより効率よく使うことを考えなければならなくなります。

 その全体の枠組みで、熱供給においてエネルギーをどう使うべきかを考えます。そのために、まず建物全体でエネルギー消費を減らします。それが、最も効率のいい省エネ方法です。建物の断熱性能を上げると、熱を逃さないで効率的に使うから、熱生成に必要なエネルギー消費が減ります。

 前回、エネルギーパスのことを取り上げました。エネルギーパスとは、建物全体における省エネ効果を示します。それによって、できるだけ省エネ効果の高い建物に関心を持つ住民を増やします。省エネハウスの需要が増えれば、建物全体で省エネする措置も講じなければならなくなります。

 エネルギーパスでは、そうした相乗効果も期待されています。

2021年10月31日、まさお

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関連サイト:
日本エネルギーパス協会

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