フライデーズ・フォー・フューチャー運動はどうなるのか?
先週金曜日の2024年9月20日、ドイツではベルリンをはじめとして100カ所以上の場所でフライデーズ・フォー・フューチャーによるデモが行われました。
ベルリンではまず首相府でデモ集会があり、その後にデモ行進をしました。警察は、デモ参加者数を発表しませんでした。ドイツのメディアは、数千人の参加者があったと報道しています。デモ集会会場の首相府に向けて電車で向かう途中、車内には、授業を抜け出してきたのかなと思われる生徒たちが結構見られました。しかし会場でデモ参加者を見ると、コロナ禍前のデモに比べ、参加者がかなり減ったのは否定できません。
フライデーズ・フォー・フューチャーの全国デモも、久しぶりだなあと感じます。
若者たちが気候変動対策を求めて立ち上がったフライデーズ・フォー・フューチャー運動。運動がはじまって、5年以上が経ちました。






2024年9月20日にベルリンの首相前で行われたフライデーズ・フォー・フューチャーのデモ集会から
今年2024年6月、欧州議会選挙がありました。ドイツでは欧州議会選挙において、16歳から投票できるようになりました。しかし環境保護をメインのテーマとして、若者にも支持されているはずの緑の党が大敗しました。その背景には、緑の党に投票した若者票が5年前の選挙に比べて3分の1以下に減ったことがあります。
ぼくはその時、若者が気候変動問題に無関心になったとは必ずしもいえないと思いました。若者は政権政党となった緑の党の政治に落胆しましたが、若者票は、徹底した気候変動対策を求める小政党に分散されたのでした(「欧州議会選挙で若者が投票した結果を読む」)。現在ドイツでは、徹底した気候変動政策を求める若者たちのフライデーズ・フォー・フューチャーのデモ参加者が減っている。選挙においても、若者票は環境保護政策を不要とする極右政党に最も流れている。戦争による難民の流入で、若者の関心が難民問題に向けられている。しかしそれだからこそ、気候変動デモを続けていく必要がある。
しかし今年2024年9月にドイツ東部3州において行われた州議会選挙においても、3州において緑の党は大敗しています。3州の投票結果を見ると、気候変動を否定し、環境保護政策は不要とする極右政党AfD(ドイツのための選択肢)が、若者票を最も獲得しています。
ドイツ東部州において、有権者と政党の間に強い絆がありません。それは、環境政党緑の党も同じです。西ドイツで生まれた政党で、インテリ政党として通る緑の党は、ドイツ東部において環境問題だけでは党勢を拡大できないでいます。環境意識を地方社会の底辺にまで浸透させるまでには至っていません。
ドイツ東部では都市が少なく、寂れた地方色が強うなっているだけに、この現実が今回の東部州議会選挙の結果にもはっきりと現れたと思います。
フライデーズ・フォー・フューチャー運動も、都市での運動が中心になっています。デモも都市でおこなれます。地方のことは見えていません。
地方にいけばいくほど、公共交通が整備されていません。そのため地方では、車のない生活は考えられません。この現実を無視して車社会に反対しても、地方の人たちは自分たちが見捨てられたと感じるだけです。
その上世界各地で戦争が拡大し、ドイツを含めヨーロッパでは、難民問題が深刻になっています。難民問題では、地方にいくほど受け入れ難民数は少なくなっています。しかし住民数に対する難民の割合は、地方にいけばいくほど高くなります。
ドイツのメディアにおいては、難民問題に関するニュースばかりが目立ちます。それが、難民政策を批判し、難民の受け入れを拒否する極右政党の勢いをより拡大させています。
極右政党は若者をターゲットにして、ソーシャルメディアを使って執拗に反難民を啓蒙しています。それが、若者の投票に影響を与えたのも否定できません。
コロナ禍からその後のウクライナ侵攻戦争、ハマス撲滅を目的としたイスラエルによるガザ戦争と、世界では戦争が拡大するばかりです。それが市民をより不安にさせ、気候変動問題なんかに目を向けておれない、関心が持てないようにしています。
しかし気候変動は、待ってくれません。世界各地で洪水や旱魃、山火事が続いています。それが、地球温暖化の結果であるのは疑いようがありません。
将来その影響をまともに受けるのは、若者たちです。しかし環境保護を徹底すればするほど、経済活動や生活に影響が出て、市民がより大きな負担を負わなければならなくなります。若者までもが、環境保護は負担だと思うようになっても不思議ではありません。
政府に徹底した気候変動対策を求めてきたフライデーズ・フォー・フューチャー運動。しかし政府に要求してデモを続ける運動にも、限界があるのも事実です。フライデーズ・フォー・フューチャー内部において、運動をどう発展させ、継続できるのか、試行錯誤が続いています。たとえば、労働組合など既成の団体と連携するようになりました。しかし、これといった適切なアイディアはまだ出てきません。
気候変動問題に対して関心のない若者が増えている一方で、そうではない若者たちも残っています。そういう若者たちの関心をひきつけていくためにも、たとえデモの参加者が減っても、フライデーズ・フォー・フューチャー運動を続け、気候変動問題の深刻さを警告し続けていかなければなりません。
日本ではよく受験戦争において「継続は力なり」といいます。フライデーズ・フォー・フューチャー運動においても、それは同じこと。地道に運動を続け、若者の環境意識を底辺から高めていくことが大切です。
2024年9月25日、まさお
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