エネルギー選択宣言ブログ

持続可能な開発のための考え方と民主主義

 ぼくは、「まず自分の生活からカーボンニュートラル化しようか」という記事を書きました。

 これは、ドイツでさえも今もって、産業革命と化石燃料に依存してきた古い考え方に支配され、エネルギー転換とカーボンニュートラルを実現する上で具体的に必要となる施策を妨害する厚い壁になっているからです。カーボンニュートラルを実現するには、市民の意識改革を行なわないと、カーボンニュートラルは達成できません。

 ぼくはドイツ社会において、再エネへのエネルギー転換を実現して、カーボンニュートラル化する必要があるのは結構、認識されていると思っていました。

 しかし、ロシアによるウクライナ侵略戦争によってエネルギーが高騰。一般の市民の生活に大きな影響をもたらしています。同時に、エネルギー問題に対する政治やメディアによるポピュリズム的で、一面的な啓蒙活動によって、ドイツ社会がより不安になっています。

 ドイツではこの2023年4月15日にまだ稼働していた原子炉3基が停止し、すべての原発が最終的に停止されました。

 しかし世論調査によると、ドイツ市民の半分から3分の2までが、この時期にすべての原発を止めるのは間違いだとし、4人に1人が原発をもっと拡大させるべきだと考えています。

 原発がなくなることによって電気代が高騰し、電気の安定供給が保証できなくなると、ポピュリズム的に吹聴されてきたことが、ドイツ社会を原発支持に転換させていると見られます。

 電気代の高騰も電気の安定供給も、原発があろうがなかろうが、今のドイツに大きな影響はありません。

 しかし保守政治やメディアが一面的にそう主張してきたことが、世論調査に反映された形になっています。

 ドイツでは今、気候変動対策として気候保護政策を講じるのは重要ではないと考えるドイツ市民が増え、過半数になってしまいました。インフレーションで、気候保護政策よりも経済政策のほうが大切だと考える意識が強くなっているからです。

 原発の問題も含め、気候保護政策と経済政策を両立させるのは、持続可能な開発(SDGs)に係る問題でもあります。将来も今と同じような環境で生活し、経済的な豊かさを維持する。そのためにカーボンニュートラル化するのです。それは、持続可能な開発の基盤とする考えです。

 しかし社会はまだ、石油や石炭など化石燃料を基盤にして目先の繁栄と豊かさだけを追求しています。社会は、産業革命からの古い意識に縛られているのです。カーボンニュートラルを実現するには、施策を講じるだけでは不十分です。社会の意識を持続可能な開発を求める意識に変えなければなりません。

 そうしない限り、カーボンニュートラルを実現するために、自分の生活に変化を強いられると、市民が反発します。それでは、カーボンニュートラルを実現するまでに時間がかかりすぎ、将来の環境がまだ人間の生活できる環境に留まっているかどうか、もう保証できません。

 化石燃料をベースにしたこれまでの考え方に支配されていると、いくら持続可能な開発が必要と認識されていても、それだけではダメだということです。持続可能な社会を形成するのは、他人事ではないのです。

 社会を持続可能にするには、再エネへのエネルギー転換が不可欠です。それによって社会がどう変わるのか、まだまったくイメージされていません。持続可能な開発のために、社会がどう変化し、そのために自分がどうすべきかを具体的に考える意識改革が必要になります。

 ドイツの場合、まだそこまで意識改革がされていないので、持続可能な開発が必要だとわかっていても、エネルギーが高騰したり、電気の安定供給が保証されないと吹聴されると、自分の生活に変化を強いられると不安になります。その結果、気候変動対策に反対したり、原発支持に180度方向転換してしまったりするわけです。

今の大人の世代にも、若い世代がどう思っているかしっかりとデスカッションして聞いていく責任がある。写真は、気候保護を求めるデモにおいてこどもたちの意見を聞くドイツのテレビ局の記者

 ぼくはまた、持続可能な開発のための考え方を持つことは、民主主義の問題を補う一つの手段でもあると思っています。

 それは、民主主義が持続可能ではないからです。たとえば気候保護や放射性廃棄物の処分は、数世代の長期に渡る問題です。こうした世代を超える問題を、民主主義によって解決方法を決めるのは不可能です。

 今将来のために決定しなければならない時に、まだ生まれていない世代は自分たちの将来に関わる問題に関し、民主主義のプロセスに参加することはできません。世代を超えた将来に関わる問題であっても、現世代にしか民主主義的に決定できません。

 となると、民主主義は世代を超えて機能しないのでしょうか。あるいは、今行うべき将来のための決定プロセスをできるだけ民主主義的に行うことはできないのでしょうか。

 そのためには今、ぼくたちが現在享受している環境や豊かさをそのままぼくたちの後に続く世代に引き渡すようにすることしか、ぼくには思い付きません。そうすれば将来の世代は、ぼくたちが今生きているのと同じ条件下で、自分たちの将来を決定することができます。

 省エネして、環境汚染と地球の温暖化を拡大させないようにすることが大前提になると思います。そうすることが、今生きるぼくたちに課せられた大きな責任です。

 それは今、ぼくたちが持続可能な開発のために意識改革して、持続可能な社会を築き上げていくことでもあります。

2023年4月19日、まさお

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関連サイト:
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