ソーシャルビジネスを定義したい
ぼくは以前、このエネルギー選択宣言ブログにおいて、スーパーで売れ残ったり、賞味期限の切れた古い食料品だけを販売するセカンドハンド・スーパー「ジルプルス(SirPlus)」について紹介しました。オープンしたのは、2017年秋でした。
ジルプルスは、ベルリンの若い実業家の新しいアイディアに基づいて設立されたスタートアップ企業です。現在、ベルリンだけで4店舗オープンしています。今後、フランチャイズ制によって、ドイツ全国で食品のセカンドハンド・ビジネスを拡大させようとしています。
さらに、スウェーデンで同じビジネスモデルでセカンドハンド食品を販売する「マットスマート(Matsmart)」が、ドイツ進出を計画しているといわれます。
売れ残りや賞味期限切れの食品を転売するのは、使い捨て時代においてとても有意義なビジネスです。セカンドハンド食品は安価で、環境保護にも貢献するので、ソーショアルビジネスだとも見られています。
ただそれによって、同じセカンドハンド食品を使ってホームレスや失業者を支援している社会福祉団体には、セカンドハンド食品を手に入れるのが難しくなっています。社会福祉団体は、セカンドハンド食品を寄付してもらい、それをスープなどにして炊き出したり、セカンドハンド食品を無償提供しています。
セカンドハンド食品のビジネスモデルが拡大することによって、セカンドハンド食品の取り合い競争がはじまったのです。
こういう問題が起こることは、すでに予想できました。だからぼくは、セカンドハンド食品のビジネスモデルが優先されてはならないと、警告してきました。でも、ぼくの心配が現実になりました。
このセカンドハンド食品のビジネスモデルは、一見すると、環境や社会福祉を考えたソーシャルビジネスのように写ります。でも、現実はそうではありません。あくまでも、資本主義経済において営利を追求するビジネスです。スウェーデンのマットスマートには、家具大手のイケアまでが資本参加しています。
ぼくはこれからは、環境や社会福祉を考えたビジネス分野では、ソーシャルビジネスとは何かを、明確に定義すべきだと思います。ソーシャルビジネスは、非営利団体か、連帯性を主体とする協同組合によって行われるべきだと、ぼくは考えています。
それは、なぜか。
それは、単にソーシャル性があるからだということではありません。これからグローバル化とデジタル化が進むことによって、資本主義経済においては従来の一般労働者が職を失い、生活の糧を稼ぐことができなくなっていきます。
そうなると、それに代わる受け皿が必要です。グローバル化とデジタル化によって失業していく労働者は、非営利と連帯性を原則とするソーシャルビジネスの分野に吸収されていくべきだと、ぼくは思います。非営利を基盤としたソーシャルビジネスを拡大させて雇用を創出するのが、将来の重要な課題になると、ぼくは確信しています。
だからこそ、ソーシャルビジネスを明確に定義するのです。
営利を徹底して追求する分野と、社会性を持って非営利と連帯性を求める分野が並行する経済。将来の経済像は、そうなるのではないかと想定しています。
それが、グローバル化とデジタル化の進んだ社会が持続可能に生き延びていくための対策ではないか、と思います。
この問題については、本サイトで連載している「地道な市民」において、今後さらに具体化させていく予定です。
2019年10月21日、まさお