左翼に厳しく、極右に甘い

 前回、テューリンゲン州において極右が加担する形で州首相が選出された問題について書きました。

 それによって、保守政党「キリスト教民主同盟(CDU)」とリベラル政党「自由民主党(FDP)」は民主主義の手続きによって、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が民主主義を破壊しようとすることを許してしまう形となりました。

 本来、極右とは手を組まない。それが、ドイツの過去の教訓でした。それを忘れてしまったのかといいたくなります。

 その数日後、選出された州首相は辞任を表明します。このゴタゴタはさらに、キリスト教民主同盟(CDU)党本部の党首が2021年の連邦議会選挙で首相候補として立候補せず、首相候補を選出した段階で党首を辞任すると表明するまでに発展しました。

 ドイツの政局が揺れはじめます。

 今回AfDを台頭させた根底には、さらに一つの大きな政治的問題があります。

 それは、保守政党とリベラル政党が社民党より左派の政党とは絶対に協力しないということを党のテーゼにしていることです。これは、どの国も抱える問題です。日本の場合、自民党が共産党を排除しようとするのと同じです。日本の場合は、もっと露骨だといわなければなりません。

 それに対し、保守には右翼、極右に甘いという体質もあります。

 これは、戦後の冷戦時代がからの名残りともいえるとも思います。ドイツでは、旧西ドイツ保守系政党が頑固に守ってきた伝統です。

 ドイツの左翼党の前進は、東ドイツの独裁政党「ドイツ社会主義統一党(SED)」です。CDUもFDPも、SEDに支配されていた東ドイツは法治国家ではなかったと主張します。だから、その過去の過ちを認めるべきだと。

 現在のCDUとFDPは、統一後に旧東ドイツのCDUとNDPDを吸収する形で成り立っています。でも旧東ドイツのCDUとNDPDは東ドイツ時代、SEDの衛星政党でした。SEDと同じ穴のムジナ、マリオネットだったということです。

 現在のCDUとFDPは、その過去も忘れてしまったのでしょうか。

 現実には、旧東ドイツにおいて左翼党は民主主義を踏襲して、とても現実主義的な政治を行っています。自治体レベルでは、CDUが左翼党と連立しているところもあります。

 この現実を無視して、左翼党と協力してはいけないというのはどういうことなのでしょう。よく理解できません。民主主義を破壊しようとするAfDを、民主主義を守ろうとする左翼党と同等に扱っています。

 テューリンゲン州では、昨年秋の州議会選挙の結果、左翼党が第一党に、極右政党のAfDが第二党になりました。保守のCDUがそのどちらかと協力しない限り、州政府が成り立ちません。

 この状況で、どうすればいいのでしょうか。

 CDUの党本部は、それに対して答えを出せません。右とも左とも協力してはいけないと固執しただけでした。それでは何の解決策にもなりません。この立場は、旧西ドイツ時代からの保守政治を踏襲したままだといわなければなりません。それを上から旧東ドイツの政治にも押し付けたにすぎません。

 それが、過去の教訓を忘れ、極右の加担を許してしまう結果を招いたともいえます。

 ぼくは、ドイツ統一後30年、保守政治とリベラル政治が何も学んでこなかったのだと思えてなりません。

(2020年2月14日、まさお)

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