第二波へのキーワードは、エアロゾル、スーパー・スプレッダー、クラスターか

 新型コロナウイルスの対策では、ドイツがPCR検査体制を整備、拡大して、たくさんの検査を実施したことが日本で注目されています。ドイツの人口10万人当たりの検査数は、日本の約14倍に相当します。PCR検査は、病原体を検出する検査です。

 ドイツの場合、確かに早い段階からPCR検査を拡大し、感染の拡大状況をいち早く把握。感染拡大を抑えて、医療崩壊を回避してきました。

 それに対し、日本はPCR検査体制の整備が後手に回ってしまった感じがします。しかしそれでも、日本の感染は予想されたほどには広がりませんでした。

 日本でPCR検査を受けるには、かなり症状がはっきりしていないと無理だったと聞いています。それで疑問に思うのは、それで検査の意味があったのかどうかです。

 新型コロナでは症状が出て数日すると、ウイルスに感染能力がなくなることがわかっています。日本のように、症状がはっきりしてからでないと検査しないなら、検査の時点ですでにウイルスの感染能力がなくなっていた可能性があります。ウイルスを保有していてもまだ症状が出ていない人のほうが、誰かを感染させる確率が高い可能性があります。

 日本の検査体制では、検査しても感染の拡大を防止できません。

 それでも、日本では感染がそれほど拡大していません。それが、偶然だったのか。あるいは、戦略的に正しかったのか。ぼくには、判断できません。ただ、検査をあまり実施しなかった日本で、なぜ感染が拡大しなかったのか。ドイツで、日本の対策が注目されているのは事実です。

 日本の対策が、なぜ効果を発揮したのか。それは今後のために、しっかり科学的に分析されるべきだと思います。

 日本の対策は、検査によって感染者を把握するよりは、クラスター対策が中心だったと思います。感染が爆発的に広がるクラスターを素早くとらえ、すぐに隔離して感染のさらなる拡大を抑える。その対策では、検査にそれほど重点が置かれていなかったのかもしれません。

店舗の入り口横には、手を消毒する消毒液が置かれている。

 もう一つ注意すべき点は、クラスターがなぜ発生するかです。

 クラスターが発生する要因は、日本でいわれる3密にあると見られます。密閉空間、密集場所、密接場所の3つが、感染のリスクを高めます。日本の厚労省は、感染経路は主に飛沫(くしゃみ、咳、つば)感染と接触感染だとしています。

 それに対し、ドイツの世界的なウイルス学者クリスティアン・ドロステン教授(ベルリン・シャリテー大学病院)は、それにエアロゾル感染を加えます。教授は、コロナ対策においてドイツ政府をアドバイスし、ドイツの感染防止対策で重要な役割を果たしてきました。

 エアロゾルは、飛沫よりももっと小さい粒子のこと。つばは、すぐに地面に落ちます。それに対し、エアロゾルは咳やくしゃみをした後や、大きな声で話したり、歌を歌った時などに飛散して、空気中に浮遊します。それが、ウイルスを拡散させ、感染を拡大させる要因になります。ドロステン教授は感染経路として、エアロゾル感染と飛沫感染がそれぞれ全体の40%、残りが接触感染だと推定していました。

 たとえば教会のミサで信者が歌った時、あるいは合唱団が密閉された部屋で練習した後に、よくクラスターが発生しています。あるいは、家族や親戚が一同に集まって飲み食いし、大きな声でしゃべったり、歌を歌ったりした時にもクラスターが発生しました。

 そして、そのクラスターを発生させる大きな要因になっていると見られるのが、スーパー・スプレッダーです。ウイルス保有者の多くは一般に、それほど新たな感染を引き起こしません。新たに誰も感染させないか、せいぜい一人か数人感染させる程度だとみられます。

 それに対して、ウイルスを持っている人の中に、一人ではるかにたくさんの人を感染させてしまう人がいます。それを、「スーパー・スプレッダー」といいます。

 新感染者数の80%が、感染者の中にいると見られる20%のスーパー・スプレッダーによるものだといわれます。ただこの割合は、今後さらに科学的に検証される必要があります。

 でも、誰がどうしてスーパー・スプレッダーになるのかわかっていません。それを生物学的に数値で示す指標もありません。医学的に診断できるものでもありません。原因もわかりません。

 こういう話をすると、「陰謀説」ではないかと疑われるかもしれません。でも、ドイツのウイルス学者ドレロステン教授は、スーパー・スプレッダーに3密、エアロゾルの3つの要因が重なると、スーパー・スプレッディング現象が起こり、クラスターが発生しやすいと推定しています。

 スーパー・スプレッダーの影響を抑えるには、どうするのか。スーパー・スプレッダーが誰か事前に確定できないだけに、とても難しい問題です。

 でも、感染者警告・追跡アプリが出てきました。それによって、感染者と接触した人が把握しやすくなりました。密閉された部屋や建物では、入場を制限して人数を管理することが大切です。密閉された空間では、頻繁に換気をして空気を入れ換えることも必要です。人に会うのをできるだけ屋外にすれば、エアロゾルの影響を抑えることもできます。

 エアロゾルやスーパー・スプレッダーの影響は、これまで新型コロナの感染状況を科学的に分析してわかってきたことです。そのいくつかは、すでに世界のサイエンス誌において発表されています。

 これまで蓄積された知見を有効に使い、第二波に備えなければなりません。

(2020年7月03日、まさお)

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