ワクチン接種の順番をどうする?

 新型コロナに対して最初のワクチンがまもなく臨床試験を終え、認可されるものと見られます。ただワクチンができたからといって、それで接種すればいいというだけの問題ではありません。

 ワクチンができても、初期の段階ではワクチンが十分に配分されません。早くワクチンを接種してほしいと望む人もたくさんいると思います。でも、すべての人の希望を一度に叶えるのは不可能です。

 そこで問題になるのは、誰からワクチンを接種するのかです。

 欧州連合では新型コロナに関して、加盟国の人口に比例してワクチンが配分されるのが決まっています。ただ最初に配分されるワクチンで接種できる人数は限られています。そのため、各国でワクチンを接種する優先順位を決めなければなりません。

 その議論をワクチンのできる前から早めにしておく必要があります。ワクチンが配分されてから誰を優先するのか決めるのでは、市民に不信や不満、混乱が起こります。ワクチン接種の優先順位を決める議論を早めにして、市民に説明して納得しておいてもらう必要があります。

 ドイツでは2020年11月9日、国の防疫機関であるロベルト・コッホ研究所内に設置されている常設ワクチン委員会、ドイツ倫理評議会、国家科学アカデミーが共同で新型コロナのワクチン接種問題に関してポジションペーパーを発表しました。

 それによると、ワクチン接種は一般的な義務ではなく、本人の自由意志で決めるものとすべきだとしています。まず最初にワクチンを接種する対象は、
1)重症化したり、死亡するリスクの高い高齢者と既往症のある人
2)感染リスクの高い仕事に従事している医療、福祉関係者、
3)社会で重要な役割を担っている保健所職員、消防隊員、警察官、教師、保母
の3つのグループにするべきだとしています。

 ワクチンは単に開業医において接種するのではなく、ワクチンセンターを各地に設置します。ワクチンセンターの設置によって、ワクチンの管理とワクチン接種、ワクチンの副作用の把握などを行う体制を整備すべきだとします。

 高齢者や重病患者などワクチンを接種にいけない人たちには、ワクチンセンターではなく、医療機関や福祉機関、家庭訪問でワクチンを接種できるようにするべきだともしています。

 ワクチン体制とワクチン優先順位については、党議拘束を外して国会で決議して法的に確定させるべきだともしました。

 そこで気になるのは、日本に医療倫理や生命倫理について議論して諮問する機関があるのかどうかです。

 治験審査委員会は、医薬品の治験だけを対象としています。医療団体や大学病院などに倫理審査員会がありますが、それは、その都度の医療倫理に関するものだけを対象にしていると理解しています。

 日本には予防接種法があり、新型インフルエンザに対してはワクチン接種のガイドラインで詳細な優先順位が決まっていたことがわかりました。

 ただ今回は、新型コロナによる新しいパンデミックです。一般的に議論するのではなく、新型コロナの実情に即した議論をして、国には事前にそれを市民に説明する義務があると思います。

(2020年11月13日、まさお)

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関連サイト:
ドイツのワクチン体制ポジションペーパー(ドイツ語)

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