日本は中国とインドのワクチンを使うほうがいい

 新型コロナワクチンの接種は一部の国を除き、進んでいません。ワクチン接種が順調に進んでいるのは、米国、英国、イスラエルなど一部にすぎません。

 それはイスラエルを除くと、自国内でワクチンを製造しているからです。イスラエルは早い段階で、ワクチンを購入。米国とも密接な関係にあるだけに、ワクチンを早く入手することができました。

 米国では、ファイザー/バイオンテックとモデルナのワクチンが開発され、自国で生産できます。ジョンソン&ジョンソンのワクチンの製造もはじまります。英国でも、アスオラゼネカのワクチンが自国で生産されています。

 ただ米国も英国も、自国で生産されたワクチンの輸出を認めていません。まだ自国内でしか使ってはならないことになっています。

 それで困っているのが、欧州連合です(EU)。EUは加盟国毎にワクチンを調達するのではなく、EU全体で共同購入して、人口に応じてワクチンを配分する連帯制度を採用しました。

 しかしワクチンが契約通りに納入されず、EUではワクチン接種がかなり遅れ、滞っています。EUでは異変種の拡大で、各国で第3波の感染が吹き荒れています。それだけに、ワクチン不足はとても深刻な問題になっています。

 ファイザー/バイオンテックのワクチンは、ドイツのベンチャー企業バイオンテックが開発しました。でもベンキャー企業だけに、生産拠点を持っていませんでした。そのためドイツ政府が莫大な資金を投入して、ドイツ国内に生産拠点を設置しました。

 それでようやく、ヨーロッパ大陸にあるファイザーの工場とバイオンテックの新工場でワクチン生産が軌道に乗りだしました。ワクチンの供給量が増えます。

ベルリンに設置された6つのワクチンセンターのうちの一つの入り口エリア。この会場では、バイオンテック/ファイザーのワクチンだけが接種される。

 アストラゼネカに至っては、まだまだ泥沼状態です。英国系企業なだけに、アストラゼネカは英国への供給を最優先させています。英国内で生産するばかりでなく、ヨーロッパ大陸で生産され、本来EU向けであるはずのワクチンまでをいろいろなトリックを使って、ヨーロッパ大陸から英国に搬入しています。

 そのためEUは、ワクチンの輸出を管理し、制限せざるを得なくなりました。

 EU域内でワクチン不足でワクチン接種が進まなくても、EUは米国や英国と違い、ワクチンの輸出を禁止していません。そのおかげて、ファイザー/バイオンテックのワクチンが日本に供給されています。日本で接種できるワクチンはまだ、ヨーロッパで生産されたファイザー/バイオンテックのワクチンだけだと思います。

 まもなく、アストラゼネカのワクチンが日本でも許可され、日本国内で生産されると聞いています。しかしアストラゼネカのワクチンは、血栓を発生させるなどの危険があり、それによってこれまで何人も死亡しています。

 EUの欧州医薬品庁(EMA)は、アストラゼネカワクチンによる副反応のリスクよりも、防感効果のほうが高いとして、アストラゼネカのワクチンを使用するよう勧告しています。血栓以外の珍しい副反応も指摘され、EMAは再審査をはじめます。

 しかしEU加盟国の中には、依然としてアストラゼネカのワクチンをストップしている国があります。さらにドイツのように、ワクチンを使用する年齢を制限しているところもあります。ドイツの場合は、使用は60歳以上だけに制限されています。さらにアストラゼネカワクチンの本家である英国でさえも、最近になって30歳以下への使用が禁止されました。

 こうして見ると、日本国内で製造できるとはいえ、アストラゼネカのワクチンにはリスクがあります。

 ドイツでは当初、ファイザー/バイオンテックのワクチンは2回目の接種を1回目の3週間後に接種されていました。しかしワクチン不足から、2回目のワクチン接種を6週間後に延ばし、できるだけたくさんの人に1回目の接種を行うようになりました。1回目と2回目の間隔を、さらに引き延ばすことも検討されています。

 これまで供給契約をしていなかったロシア製のワクチンについても、EMAによる審査が行われています。ただ最終の第3期治験のデータが不足しているのがネックになっています。ただロシア製のワクチンが許可されるのに備え、すでに自国内でライセンス生産することを考えている国や地域もあります。

 EUはこうして、できるだけワクチンを効率的に利用するほか、ワクチン供給ルートを拡大することも考えています。そのおかげで、日本やその他の国にもワクチンが供給されているといっても過言ではありません。

 ぼくはパンデミックという緊急時に、EUに依存しているだけの日本に疑問を持ちます。EUは域内での犠牲を覚悟の上で、日本にもワクチンを供給してくれているのです。日本はそれに対し、どう応じるべきなのでしょうか。

 日本はワクチン調達において、もっと独自の努力をするべきだと思います。

 アジアにはすでに、中国とインド製のワクチンがあります。中国やインドのワクチンでは、アジア系の人種に対する治験がすでに終わっています。自国内での接種数も多いので、アジア系の人に対する安全は立証済みです。

 それに対して、ファイザー/バイオンテックとアストラゼネカのワクチンは、アジア系人種に対してごく少数しか治験が行われていません。

 それを考えると、日本は中国とインド製のワクチンを調達して接種することも検討するべきだと思います。早急に審査をはじめ、日本国内でライセンス生産する可能性も考えるべきです。

 その方が、ワクチン接種が早く進む可能性があります。検討する価値があると思います。

 ワクチン開発で遅れてしまった日本。緊急時に、中国やインドに対してメンツを立てたり、プライドを持つことには意味がありません。オリンピックを開催したいとしておきながら、パンデミックに対してありとあらゆる手段を講じないで、オリンピックどころではありません。

 この状況において、中国やインド製のワクチンに抵抗感を抱くのはおかしいと思います。こどもっぽいと思います。

 中国に関しては確かに、ワクチンを覇権の拡大に利用しているところがあります。それには、注意が必要です。でもワクチンによって新型コロナからできるだけ早く解放されるほうが、もっと大切ではないですか。
 
(2021年4月09日、まさお)

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