日本はドイツ極右のお手本

 ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は2021年4月10日と11日の2日間、ドイツ南東部のドレスデンで党大会を開催しました。党大会は同年秋に行われるドイツの総選挙、連邦議会選挙に向けて、党のマニュフェストを決めるほか、選挙の顔となる党のトップ候補を選出するためのものでした。

 党大会では、政府のコロナ対策に反対して、コロナ禍におけるマスクの着用義務の撤回を求めるほか、欧州連合(EU)からの離脱を決議しました。その代わりに、ヨーロッパ経済権益共同体の設立を求めています。

 党大会で顕著になったのは、これまで党内で権力を把握していた穏健派が後退し、党内でも過激な極右グループがより発言権を得たことです。

 その極右グループの中心人物が、ビョルン・ヘッケ氏です。ヘッケ氏は西ドイツ生まれで、2014年まで学校でスポーツと歴史の先生をしていました。その後、ドイツ東部テューリンゲン州の党代表となります。その後、同州州都で極右的思想を持つ仲間とともにドイツ民族のための政治を行うよう求めるエアフルト決議を採択。党内でも過激な極右グループ「翼(Flügel)」を設立し、その中心人物になります。

 現在、このグループは民主的な立憲国家を破壊する危険なグループとして、治安当局の監視対象になっています。

ドイツのための選択肢の選挙ポスター。ポスターには、「新しいドイツ人? 自分たちでつくるよ」とある。このポスターは、これまでどの選挙戦でもよく見られた

 今回の党大会では、ヘッケ氏らの極右グループが党内の実権を握るまでには至りませんでした。しかしEUからの離脱では、当首脳部の意向に反し、ヘッケ氏らの極右グループの主張が通った形になりました。ヘッケ氏らが党内で勢力を拡大したといわざるを得ません。

 党大会ではさらに、現在パスコントロールなど何の監視も行われずに通過できるドイツ国境で、検問所を設けるなどして国境のコントロールを再開するほか、国境線に塀を設置することも決議されました。

 難民問題でも、難民家族の受け入れを拒否しました。ドイツの受け入れる難民は、ドイツ民族の価値観と社会秩序に適する文化的、宗教的な背景を持っていなければならないとします。つまり、イスラム教徒など異教徒は受け入れないとはっきり明言したことになります。

 移民政策についても、たとえ高度な技術を持っている専門職であっても、厳しく制限すべきだとします。

 この難民、移民政策において、極右グループの中心人物ヘッケ氏は、「もっと日本的になるべきだ」として、難民、移民政策において日本をお手本にすべきだと発言しました。

 難民をほとんど受け入れず、移民も極端に制限されている日本の政策が、ドイツの過激な極右グループの主張とぴったり一致するからだと見られます。それほど、日本の難民、移民政策が極右的だということでもあります。

 コロナ禍において、日本政府は水際対策と称して、日本の滞在許可を有し、家族が日本で生活していても、仕事や家庭の事情で一旦出国すると、外国人には再入国を認めませんでした。

 これは、人権上、さらに人道上とても信じがたいコロナ対策です。家族が一緒に暮らす権利を奪ったことになります。人権侵害です。そういうことに何も疑問を持たない日本政府のやり方は、とても民主国家だとは思えません。

 それが逆に、ドイツの過激な極右グループから認められ、称賛されたのですから、日本の政治がいかに極右的かということが立証されたことになります。
 
 日本の政治が今、このレベルになっていることをはっきり認識してほしいと思います。
 
(2021年4月16日、まさお)

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関連サイト:
ドイツのための選択肢党本部サイト(ドイツ語)

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