日本の政治には中身がない

 ドイツの国政選挙である連邦議会選挙が、今年9月に終わりました。と思ったら、今度は日本で衆議院選があります。その前に、自民党総裁選まであったこともあり、ぼくにはドイツと日本の政治の違いがよりはっきりしたように感じます。

 ドイツでは選挙後、連立問題でほとんど毎日のように連立する可能性のある社民党と緑の党、自民党の3党の政策の違いについて様々な報道があります。それに対して、日本の報道では総裁選立候補者をみても、さらには政党の政策をみても、それぞれの違いがよくわかりません。

 新聞紙上などで簡単に比較したものがあっても、それが根本的な違いなのかどうかとても疑問に思います。表面的な違いにしか写りません。

 国会審議を見ても、政策に関する議論がほとんどありません。野党は政府の失態を批判したり、揚げ足取りしているだけ。あるいは、政府首脳のスキャンダラスを追求するだけです。マスコミの報道もそっちばっかりに集中しています。

 それって、政治ですか。政治の報道ですか。そんなことして、どこに公益があるのでしょうか。政治のおままごとですね。

 日本のマスコミでさらに呆れるのは、皇室の眞子さん結婚問題です。皇室であろうがなかろうが、誰と結婚するしないは本人の自由でしょう。それは、人の人権と尊厳を守る大前提です。それをなぜ周りが騒いで、いろいろいうのですか。個人の家族の内側までほじくり出して報道するのは、大衆紙や昼のバラエティーショーが興味本位ですること。それをどのマスコミも『まじめ』に報道しているのだから、最低もいいところです。

 そんな報道には、購読料や放送料なんか払いたくありません。ぼくはドイツにいるのでいいですが、そんなことにお金を使わなければならない日本にいる人たちがかわいそうです。

 国外から見るとこの状態は、日本の政治にもマスコミにも中身がないからだとしか思えません。

気候変動対策を求めてドイツの国会議事堂前でデモ集会をする市民

 ぼくは元々、日本に民主主義はないといっています。それどころか、中身のない政治で選挙をするなら、民主主義はいらないですよね。中身に違いがあって異なる意見があるから、民主主義の意味があるのです。中身のないことについて選挙をする意義はありません。それとも日本の選挙は、人気投票ですか。そんなことについて報道しても、選挙で勝つ政治家の懐具合を潤すことにしかなりません。議員になると税金からお金をもらうのだから、税金泥棒もいいところです。それなら、選挙に無駄な税金を使わないほうが、まだましではないかとさえ思えます。

 さらに日本の政治で気になるのは、じじいばかりだということです。日本の法的定年退職年齢が60歳なら、政治家も60歳で定年するのが民主的というものです。政治が定年退職年齢を決めたのだから、政治家もそれに従うのが筋です。政治家だけが例外ということは、立法機関としておかしくありませんか。立法機関に属する議員が自分たちで成立させた法律に従わないなら、法治国家は成り立ちません。

 じじいばかりだから、政治家の顔ぶれも変わりません。それでは、政治も変わりません。今世界では、気候変動問題など重大な問題が山積みになっています。社会は大きく変わるざるを得ません。その過渡期にある時に、じじいばかりでは、政治はその変化に迅速に対応できません。

 日本の政治がこんな状態なら、政治は国のためにも、そこで生活する市民のためにもなりません。政治家の自慰好意です。

 たとえば今秋のドイツ連邦議会選挙では、第1党となった社民党の当選議員の半分は新人議員でした。さらにその新人議員の半分(48人)は、党青年部で政治活動していた若い議員たちです。社民党はこうして。世代交代しています。

 じじいばかりということはさらに、女性議員も少ないということです。ドイツ連邦議会議員の女性の割合は、まだ34.7%と低いのは事実です。ただ政党別に見ると女性議員の比率は、緑の党が58.5%。左翼党53.8%、社民党41.7%、自民党23.9%、キリスト教民主・社会同盟(同盟)23.5%、極右のAfD13.3%となります。

 保守からさらに右寄りの政党になるほど、女性の割合が少ないことがわかります。ドイツでは今回、トランスジェンダーの国会議員も誕生しました。社会が多様なのだから、国会も多様であるのは当たり前のことではないですか。

 それに対して、今年2021年3月末時点の日本の衆議院議員の女性議員の比率は10%にも達しません。ドイツの極右政党よりも女性議員の比率が低いことがわかります。岸田新内閣でも、首相を除く全閣僚20人のうち、女性大臣は3人しかいません。それでも、菅内閣から1人増えました。

 ドイツの新政権では、大臣の男女比は半々になると予想されます。首相に選出されると見られる社民党のショルツ首相候補がすでにそう公言しています。

 今回ドイツの連邦議会選挙では、メルケル首相の同盟が大敗しました。その背景の一つに、政策が中途半端で、中身がなかったことを挙げることができます。その点では、日本の政治に近いかもしれません。

 ドイツの有権者は、中身のない政党から離れました。これまで通りの政治をしていては、社会は変わらないと判断したとも見られます。ドイツの有権者は、重大な過渡期にいる現在、社会はそれに対応して変わらないといけないと変化を求めたと思います。今変わらないと、社会は山積みの問題に埋もれてしまう危険があります。

 でも日本では、どの政党にも中身がないのだから、社会は変わりようがありません。日本の政策はこれまでも、「これまで通り」が続いてきました。衆院選後も、これまで通りなんだと思います。

 日本はまだ経済力があるから、国際的な位置を維持しています。でも日本の経済は停滞しており、まもなく経済的にも世界から遅れていくことが目に見えています。

 それでもいいのですか。このまま山積みの問題に埋もれ、国際社会からさらに取り残されていきますよ。

 ぼくは、日本がこういう危機的な状態に置かれていることをもっと認識してほしいと思います。それが認識されていないから、中身のない状態が続くのだと思います。じじいたちには、こんな危機感など抱けません。

 若い世代にはこの厳しい現実を認識して、そこから抜け出すため、政治的な発言をしてほしいと思います。政治の話がダサいということはありません。今政治の話をして政治を変えないと、自分の将来を失います。それくらいの危機感を持って、自分がどうするべきなのか、一人一人に考えてほしいと思います。

(2021年10月15日、まさお)

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関連サイト:
ドイツ連邦選挙管理委員会のサイト(ドイツ語)

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