異次元の少子化対策なんて何だろう

 日本の岸田首相が少子化対策を表明しました。1)児童手当など経済支援を強化する、2)保育など子育てサービスを充実させる、3)働き方を改革するの3本が柱になっています。これらの施策によって、『異次元』の少子化対策を実現するのだそうです。

 でもこれって、本当に『異次元』ですか。

 確かに、日本の対策としてはこれまでにない画期的なものかもしれません。しかし世界でも飛び抜けた赤字財政となっている日本において、少子化対策にどれくらい財政支援ができるのでしょうか。それも疑問です。

 たとえばドイツでは育児に関して、手厚い経済支援が用意されています。児童手当は現在、1子当たり250ユーロ(約3万6000円)。何人子どもがいても、手当額は減額されません。子どもが成人となる18歳まで支給されます。それ以降も、子どもがまだ高等教育や職業教育を受ける限り、児童手当はまだ支給されます。

 児童手当はなお、就業権ないし滞在ビザを有する限り、外国人にも支給されます。

 次に、子育ての問題です。子育てをどう定義するかも、はっきりさせなかればなりません。教育を子育ての一部とすると、ドイツの場合一部州を除くと、大学教育まで公立の教育機関で勉強する限り、授業料はほとんど支払う必要がありません。日本のような受験競争もありません。だから教育費には、それほどお金がかかりません。

 妊娠から出産までも、医師にかかる負担はすべて健康保険でカバーされ、自己負担もありません。出産は病気ではないとして、健康保険が適用されない日本とは大きな違いです。

 働き方改革についても、職業と育児を両立するという点では、ドイツのほうが進んでいます。育児は女性のものという古い考えも、ドイツでは少なくなっています。育児休暇は女性でも男性でも、同様に取得できます。親のいずれにも、子どもが3歳になるまで36カ月の育児休暇を取得する権利があります。

 ここでは詳しく書きませんが、その間に給与ないし給与の一部も保証されます。

 日本では長期の育児休暇を取得すると、変な顔をされるなどプレッシャーがかかることが多いはずです。ドイツではそういうことがまったくないとはいえませんが、日本に比べ、育児休暇をとることに対しては格段に寛容です。

 ここまでは、岸田首相のいう3本の柱に関するドイツの施策について簡単に述べてみました。

2014年3月にベルリンであった反原発デモに参加する母と娘

 日本では、少子化対策の先進国としてドイツではなく、フランスが注目されています。しかしぼくは政策的に見ると、ドイツとフランスの間にそれほど大きな違いはないと思っています。その他の欧州諸国においても、いろいろな取り組みがあります。どの政策が適切かは、それぞれの国の事情も把握して判断、分析する必要があります。

 少子化対策は、家庭の問題です。こどものある家庭をいかに支援し、仕事と家庭(育児)を両立させることが、政策立案においてとても大切になります。単なる少子化だけの問題ではありません。たとえばジャンダーの問題でもあるという認識が必要です。

 しかしぼくは、少子化対策は必要ですが、少子化対策として適切な対策を講じるだけでは不十分。問題は解決できないと思っています。

 むしろ少子化の問題は、社会つくりにあると思います。生きやすい社会かどうか、共生していける社会かどうか。市民がお互いに協力しながら、将来に不安なく、安心、安定して生きていけると市民が感じることができない限り、出生率は上がらないと思います。

 少子化対策について考え方を根本的に切り替えない限り、少子化対策いや家庭政策は結実しません。

 それでは、生きやすい社会、共生していける社会とは、どういう社会なのでしょうか。

 たとえば、治安のしっかりている社会、いつも簡単に就業できる社会、失業する心配もない社会、毎日遅くまであくせく働く必要のない社会、競争の激しくない社会、自分の時間を自由にもてる社会、お互いに助け合って生きていける社会、みんなが平等に、協力して生きていける社会など、たくさんのキーワードを挙げることができると思います。

 そのキーワード毎に、具体的にどういう施策を講じるべきか。それから考えない限り、出生率は上がりますせん。少子化対策だけでは、出生率が一時的に上がっても、持続性がないと思います。

 社会つくりの根本から取り組まなければならないということでもあります。ぼくはそう思います。

(2023年2月25日、まさお)

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関連サイト:
少子化対策(内閣府)

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