日本を追いかけるドイツ

 国際通貨基金(IMF)は昨年2023年10月のレポートで、2023年の国内総生産(GDP)をドルに換算すると、それまで世界3位の日本がドイツに抜かれ、4位に下がると予測しました。

 IMFの予測では、2025年には日本のGDPはインドにも抜かれ、第5位に下がるとしています。

 2028年までの予測では、日本のGDPがドイツを抜き返すことはないともなっています。

 その主な要因は、ドイツでインフレで物価高となっていることと、円安でドルに換算すると日本が不利になるからと、見られます。

 現在ドイツでは、景気がよくありません。先進国の中でも最も景気が悪く、経済はマイナス成長になっています。それでいてドイツが、経済力で日本を抜いて世界第3位にのし上がるのは不思議に見えます。

 日本がものつくりの国だという看板にさびがつき、日本は輸出国としても国際競争力を失ってしまいました。技術国とはいえない状態にまでなっています。当然の成り行きなのだと思います。

 ドイツはGDPで世界第3位となっても、その日本の後を追っているといわなければなりません。ドイツもものつくりの国です。同時に、日本のように高齢化が進んでいます。

ドイツ東部にあるロイナ工場は、1916年、1960年に設置され、ドイツの化学産業の発祥地のようなものだった。しかし現在、ほとんどのプラントが取り壊され、工場団地として再編され、不動産サービスに徹している

 今ドイツに、未来に向けた技術はありません。伝統的な産業で何とか持ちこたえているといわなければなりません。それをヨーロッパに輸出し、まだ輸出で経済を支えていっます。それが、日本と違うところだと思います。

 しかしそれも、時間の問題。ドイツの産業はいずれ、世界の流れから取り残されていくのは間違いありません。

 高齢化で専門技術者が減り、移民を促進して若い技術者を勧誘しなければならない状態にまでなっています。

 ドイツが日本のように、過去の技術国に落ちぶれていくのが目に見えています。

 ドイツ政府はこの問題を認識し、ドイツ経済と技術を未来志向型に改革しようとしています。しかしドイツ社会では多くが、それに反対し、抵抗しています。自分たちの今の生活を変えたくない、守ってほしいというのが今のドイツ社会に蔓延する傾向です。

 つい最近、ドイツの農民デモに隠れたドイツの農業の問題について書いたばかりです(「環境問題、今のドイツ社会の矛盾」)。そこにも、ドイツが将来に向けて変わっていけるかどうか、ドイツは大きな問題を抱えています。

 ドイツの状態を東西ドイツに分けてみると、ドイツ統一後に資本主義社会へと大きな改革を体験しなければならなかった東部ドイツでは、技術移転や構造改革が進み、政治と社会がその必要性を十分に理解しているのがわかります。

 マイナス成長になっているドイツの経済ですが、ドイツ東部では経済成長率が5%くらいになっている州がいくつもあります。

 それに対して、ドイツ経済を支えているものつくり州であるドイツ南西部の州と西部州において、経済が成長していないか、縮小しています。これが、ドイツが不景気となっている要因です。

 ドイツ東部ブランデンブルク州のヴォイトケ州首相が外国人記者会との懇談会で、ドイツ西部では将来に向けた技術移転と構造改革の必要性が真剣に考えられておらず、過小評価されていると語っていました。その通りだと思います。

 ドイツでは、ドイツ北部や東部に電気自動車工場やバッテリー工場、チップ工場など将来に向けた産業が立地しはじめています。それは、それらの地域で再生可能エルギーで発電された電力が豊富にあるからです。

 それが今後、どれだけドイツ経済を支える力を持っていけるのか。

 しかし今のドイツの状況を見ると、ドイツが日本と同じような運命を追いかけているように思えてなりません。

(2024年1月19日、まさお)

関連記事:
環境問題、今のドイツ社会の矛盾
日本はものづくり国ではなくなったのか
ものつくりの転機

関連サイト:
国際通貨基金(IMF)の関連データ(英語)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.